辺野古新基地建設に伴う設計変更承認を国が代執行した28日、民意を無視する国への怒りが県内を覆った。米軍普天間飛行場の返還合意から27年。県民投票や知事選を通じて、新基地の是非を沖縄から繰り返し示すものの、現実はその民意はなかったかのように工事が強行される不条理が続く。法廷闘争を通じて国と地方の関係や民主主義を問い直した2023年がまもなく終わる。大浦湾側の工事着手を控える24年、新基地建設を巡る対立は新たな局面を迎えようとしている。
国による代執行がなされた28日、市民からは国の強行策を批判する声が相次いだ。一方で、米軍普天間飛行場の固定化を避けるために政府を支持する意見もあった。
新基地建設が進む名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前。この日は小雨が降る中、市内外から約80人が集まり、「不法工事はやめろ」などとシュプレヒコールを上げた。工事車両が行き交うゲートでは約40人が数回にわたり座り込んで抗議。約20人の警察官が市民を排除した。背後には約40人の警備員が整然と並んだ。
抗議に訪れた元教員の狩俣紀子さん(61)=西原町=は「国のやり方は許せない。できることは限られているが、民意を示したい。子や孫に自然や文化を残したい」と足を運んだ理由を話す。辺野古に住む島袋文子さん(93)は「県民みんなが立ち上がれば、日本政府の勝手にはできないだろう」と、工事阻止を若者らに呼びかけた。
「国と地方はもはや対等ではなくなっている。あしき前例ができてしまった」。那覇市の無職男性(75)は怒りを込めて初の代執行を批判する。県に対し「子や孫の世代が後悔しないためにも、新基地反対の姿勢を貫いて」と要望した。
石垣市の農家上原政一さん(72)も「沖縄をいじめている分かりやすい構図だ」と指摘する。代執行に踏み切った斉藤鉄夫国土交通相が「平和の党」を掲げる公明党所属であることを踏まえ、辺野古を推し進める政府・自民党と「同じ穴のむじなじゃないか」と皮肉った。「国はなぜ沖縄を捨て米国追随を続けるのか」と国の民意無視に憤る一方で、その横暴に疑問を感じている人もいると信じている。
南城市の70代女性は「県が反対しても結局は国の望む方向に流れていく。やりたい放題だ」と話し、差別を痛感する。先島で急速に進む軍事力強化にも触れ「民主主義が忘れられてしまったように感じる。怒りしかない」と話した。沖縄市に住む女性(61)は「沖縄の経済発展のことを考えると、街の中心にある普天間基地が固定化されている経済損失が許せない」と語る。そして「立地としては街の端になる辺野古に移設するということなら、代執行に賛成だ」と述べた。
(増田健太、渡真利優人、照屋大哲、福田修平、岩崎みどり)