沖縄県内の多くの自治体で災害発生時に使用できるトイレの備えが足りていない。誰もが日に数回は利用する上に、排せつは「待ったなし」で我慢することができない。感染症や体調の悪化など命に関わる問題として災害時のトイレの備えを強く認識する必要がある。
1995年の阪神・淡路大震災以降、災害時のトイレ問題が指摘され続けている。「トイレパニック」との言葉も生まれた。その後の新潟中越地震や東日本大震災時などもトイレ問題が取り沙汰され、汚物にあふれ悪臭が漂う避難所のトイレの使用を避けるために、飲食を制限してエコノミークラス症候群を誘発するなどの事例も多く報告されている。
トイレの不足理由に「食料備蓄を優先している」と回答する自治体が複数あった。実際に、2021年に本紙が実施した食料備蓄の調査では6割に当たる24市町村が県が提示する目標値を「達成している」と回答している。一方、今回の災害トイレに関しては、8割が不足していた。食事をしたら排せつにつながるのは当然であり、そもそも優先順位をつけるものではない。
家庭や個人での備えももちろん重要だが、住民などの命と健康を守る役割がある行政が安心安全な環境を提供するための備えは不可欠だ。災害はいつ起きるか分からない。トイレを防災の最大要素の一つとした喫緊の取り組みが求められる。
(新垣若菜)