能登半島地震の被災地ではライフラインの復旧が遅れ、避難所の衛生環境が悪化する問題に直面した。そんな中、本紙の調査で災害時に使用できるトイレの確保が県内の多くの自治体でも不足していることが明らかになった。全国的にも同様の課題を抱える一方、不足分を補うためにマンホールトイレの導入も広がりつつある。
災害時にマンホールのふたを取り外し、上に便器を取り付けて排せつ物を下水道に直接流す「マンホールトイレ」を導入する市町村が、那覇市や石垣市など県内で12市町村あることが琉球新報の調べで分かった。搬入に時間がかかり、し尿処理も必要となる仮設トイレに比べ、マンホールトイレは設置が簡単で迅速に確保できるという利点があり、全国的にも導入が広がっている。
災害時にはすぐに使用できる簡易、携帯トイレの備蓄が不可欠となるが、保管場所や予算などの兼ね合いもあり、県内では約8割の自治体が不足。必要回数分すべてを備蓄でまかなうことが難しい現状が本紙調査でも浮き彫りとなった。
避難所では仮設トイレの確保が一般的だが、内閣府ガイドラインによると、東日本大震災では避難所への搬入が4日以上かかった自治体が約7割を占め、中には65日を要する自治体もあったという。加えてし尿処理が行き届かず環境衛生が悪化するなどの問題もあった。
そこで国は、排せつ物のくみ取りが不要で、臭いも少なく衛生的とされるマンホールトイレの充実を呼びかけている。同トイレは洋式で段差がなく、高齢者や障がい者も利用することができる。
県内で確保しているのは、那覇市で30基、石垣市で5基、糸満市で12基、沖縄市で20基、豊見城市で10基、うるま市で6基、南城市で14基、大宜味村で5基、恩納村で6基、嘉手納町で11基、中城村で4基、与那原町で4基。那覇市の担当者は備蓄の不足分を補うために、「積極的に活用することを想定している」と話した。
災害地では特に大きな広がりを見せている。熊本市では、熊本地震時に四つの学校に20基備えていたが、昨年末時点で68校340基まで増やした。今後市内の小学校126校すべてに充実させる予定という。本紙の取材に対し、担当者は「避難想定人数が11万なので、その人数分の必要回数を備蓄するのは現実的に厳しい。自宅避難者が使用することも想定してマンホールトイレの増設に力を入れている」と語った。
国土交通省の調査によると、21年度末で全国に4万2227基のマンホールトイレが整備されている。
(新垣若菜)