沖縄リーフの「台風石」、実は艦砲射撃が起因か 本島南部 仲座琉大教授ら論文 直径40~50メートルの穴「砲弾痕」


沖縄リーフの「台風石」、実は艦砲射撃が起因か 本島南部 仲座琉大教授ら論文 直径40~50メートルの穴「砲弾痕」 米須海岸に点在する岩の塊。艦砲射撃によるサンゴ礁の破壊で発生したものであるという(仲座栄三教授提供)
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 琉球大学工学部の仲座栄三教授と菅沼匠人さん=同大4年=は、沖縄本島南部の東海岸沿いでサンゴ礁のリーフの上に点在する岩の塊について、沖縄戦当時の1945年の米軍による艦砲射撃でサンゴ礁が破壊されてできたものであるという新たな研究成果をまとめた。

 これまでは台風に伴う高波などでサンゴ礁が破壊されて運ばれてきたというのが定説だった。新たな研究成果はこの定説を覆すもので、沖縄戦の艦砲射撃に起因すると判断されるリーフ上の岩の塊や、リーフに空いた穴をそれぞれ「沖縄戦の石」「沖縄戦の弾痕」と命名した。6日に学術論文を琉球大学のホームページ上で発表した。

 仲座教授らは89年に本島周辺のリーフ上に点在する、岩の塊の分布を初めて明らかにした。ただ、岩の塊はリーフ先端沖にもともとあったサンゴ礁だと分かったものの、どのような経緯でリーフ上にたくさん存在するのかは分からなかった。最近の研究では、岩の塊を「台風石」と呼び、台風に伴う高波によってでき、運ばれてきたというのが定説となっていた。

 仲座教授は5年ほど前からドローンも使い、本島南部の海岸や久高島東海岸などを調査した。糸満市の米須海岸付近のリーフには弾痕が無数にあり、大きいもので直径40~50メートルの穴がリーフ内側に空いていた。

 仲座教授は「砲弾による穴だと考えられ、そこから岩の塊が散らばったと判断できる。台風の波などによって自然にサンゴにこれほどまでの大きさの穴が空くことは考えにくい」と指摘。糸満市摩文仁や荒崎岬でも艦砲射撃による崩壊を起こした岩や割れたとみられる岩を多数、確認できた。荒崎岬近くにある縦7メートル横5メートル高さ1・5メートルほどの「カサカンジャー岩」も艦砲射撃に起因すると推測されるという。

米須海岸のリーフ先端部のサンゴ礁の破壊箇所。こうした破壊箇所は無数に見られ、「沖縄戦の弾痕」と命名した(仲座栄三教授提供)

 仲座教授は「沖縄戦からまもなく80年を迎え、沖縄戦の実体験を語る方々も少なくなる中、教訓の継承が課題となっている。沖縄戦の石や弾痕は半永久的に存在し、艦砲射撃の激しさの実態と戦争の教訓を語るものである。戦争遺跡として世界遺産に登録されることを期待したい」と話した。 

(中村万里子)