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“自治法改正”は「国が殿様、地方が家来」の危険 保坂・世田谷区長に聞く<国策と闘う>


“自治法改正”は「国が殿様、地方が家来」の危険 保坂・世田谷区長に聞く<国策と闘う> 保坂展人世田谷区長
この記事を書いた人 Avatar photo 南 彰

 辺野古新基地を巡り、知事の権限を奪う「代執行」を強行した岸田政権が、地方自治法改正案の成立を目指している。国による指示権を拡大し、国と自治体の関係をかつてのように「上下・主従」に戻す内容だ。新型コロナ対策で、国の誤った方針を見直させた首長は「『国が殿様で地方が家来』という上意下達の国に変える危険な法案だ」と反対している。

 「緊急時に国が正しい判断をするとは限らない。なぜこんな法案が出てくるのか」

 政府の改正案を批判するのは、コロナ禍に高齢者施設などでのPCR検査を積極的に行う「世田谷モデル」をつくった東京都の保坂展人世田谷区長だ。

 コロナ禍で、「国は読み切れないぐらいの通知を出し、法的根拠のない全国一斉休校まで打ち出したが、自治体はそれを守ってきた」。保坂区長はそう振り返る。懸念したのは、住民の命や安全を守るための自治体の創意工夫がつぶされることだった。

 世田谷区が推進したPCR検査を巡っては、国は「みだりにやるべきではない」と後ろ向きだった。「医療資源がパンクする」「世田谷区長の提案は暴走だ」などとバッシングも絶えなかった。コロナ禍の途中で理解を示す大臣に代わり、区の提案が実現したが、「今回の法改正が通り、国が指示を出せるようになると、住民に近い自治体が機敏な対応ができなくなる」と指摘する。

 保坂区長は、今回の改正案は、辺野古を巡る代執行とつながっているとみている。

 「辺野古の代執行は『安全保障に関する特殊な措置』という見方があるがそうではない。沖縄の県民投票の結果を無視した『自治』の問題だ。一つの県でされたことはどこでも起きうる。『国が殿様で地方が家来』という国の差配や指揮に対する批判を許さない社会に移行しようとしている」

 保坂区長らは2022年末、「地域主権」に根ざした政治や行政をめざす「ローカル・イニシアティブ・ネットワーク」を立ち上げた。20日には玉城デニー知事を招いたイベントで、地方自治法改正案や代執行の問題点を議論する予定だ。保坂区長は「地方自治の現場からボトムアップの民主主義を再構築していきたい」と話す。 

(南彰)


 玉城デニー知事が参加する「ローカル・イニシアティブ・ネットワーク」のシンポジウムは、20日午前10時15分から東京都内で行われる。オンラインでも参加できる。玉城知事が辺野古を巡る代執行について特別報告をした後、「NO YOUTH NO JAPAN」の能條桃子代表、政治学者の中島岳志東京工業大教授、岸本聡子東京都杉並区長、保坂展人世田谷区長と「地域主権」をテーマに議論する。参加費は2千円(25歳以下は千円)。事前申し込みが必要。