食べる部分は浮き袋
おにぎりは何味が好きですか?本土だと梅干しや鮭、昆布。沖縄なら油味噌、そして何よりジューシー!そのジューシーに入っている黒いものが今回の主役、ヒジキです。
ヒジキは北海道南部から沖縄にまで育つ海藻です。基本的には温帯性で、亜熱帯の琉球列島では沖縄島東海岸の数カ所にしか見られません。浅い岩礁で、ある程度の波に揺られるという条件に合う場所が限られているんですね。食べるひじきは黒いですが、本来は黄色や緑がかった茶色。春に岩礁を覆うように成長し、3月終わりから5月初めが収穫期です。暑くなると根のような部分だけ残して枯れ、翌年の冬にまた成長を始めます。
ヒジキはホンダワラという海藻の仲間で、浮き袋を持つのが特徴です。少しギザギザした葉っぱと、丸い玉っころを持つ茶色い海藻を見たことはありませんか?その玉が浮き袋、気泡です。波で海藻ごとちぎれると、気泡でぷかぷか浮かんで海を旅する「流れ藻」になります。これには小さなカニやウミウシや小魚などが一緒に隠れていて、まるで漂流船に乗り合わせているよう。ヒジキの気泡は細長く、いわゆる食用の「芽ヒジキ」の部分がこれに当たります。
さて、海藻って実は複雑な植物で、なんとヒジキは雌雄異株!精子と卵を作って受精し、そこから幼体を作ります。伸びたヒジキをよく観察すると、芽ヒジキの部分とは別に、卵をもつ短い「芽」のようなものが茎から生えてるのが見つかりますよ。
4月、刈り取られたヒジキ岩礁の近くに小さなイソアワモチがいました。彼らも海藻ご飯で大きく育つことでしょう。
Vol. 76 ヒジキ
Sargassam fusiforme
● 目:ヒバマタ目 Fucales
● 科:ホンダワラ科 Sargassaceae
● 属:ホンダワラ属 Sargassum
写真撮影:
ヒジキ、ホンダワラ類、イソアワモチ 2024年4月25日(南城市馬天)
しかたに・まゆ 東洋大、琉球大卒、福井県立大大学院修了、東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。
2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。令和4年度沖縄県環境保全功労者、ジャパンアウトドアリーダーズアワード2024特別賞。
しかたに・のりかず 琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行なっている。