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家庭の防災「お母さん任せ」になっていませんか? 皆で家事分担、まず“ひとつプラス”から 沖縄


家庭の防災「お母さん任せ」になっていませんか? 皆で家事分担、まず“ひとつプラス”から 沖縄 松村直子さん
この記事を書いた人 Avatar photo 慶田城 七瀬

 「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が8日に発表され、沖縄でも大きな地震や高い津波に対する警戒や日頃の備えの見直しが呼びかけられた。防災士として活動する「LIFE+LIFE laboratory」代表の松村直子さん(51)は「旧盆や夏休み期間で家族が集まるこの機会に、男女共同参画の視点で防災を考えてほしい」と家庭での役割分担の見直しを提唱する。

 北谷町役場総務部基地・安全対策課の職員として美浜区や謝苅区の防災計画の策定補助を務めた経験がある。行政が立ち入れない家庭の防災は、女性の防災意識を高める必要があると考え、さまざまな世代の女性たちと勉強会を開いてきた。

 家庭では女性が家事を担う役割が大きくなる傾向があるが、松村さんは「お母さんがいなかったら家が回らない、備蓄を準備してもどこにあるか分からない、では意味がない。普段から家事をみんなで担うことが必要だ」と指摘する。

 「防災」というと、防災グッズを買って備蓄品をそろえることや、住宅の耐震強化などが想起されるが、松村さんは「普段の状態にプラスすることから始めてみては」と提案する。

 飲用水は、備蓄用にたくさん買うのではなく普段買う時に一つ増やし、重ければ車に積んでおく。ウオーターサーバーのある家庭ならタンクの注文を一つ増やす―など。キッチン周りには、油鍋や食器棚、冷蔵庫など大きな揺れが起きると危険な場所がある。滑り止め下敷きなどは、100円ショップで買える。

 家具など重い荷物の移動は人手が必要だ。揺れると倒れやすい冷蔵庫は、流し台やコンロの前に配置すれば、倒れても隙間からしゃがんで抜け出せる。腰より上に持ち上げられないような重い物は、高いところには置かない。「普段、家の中や台所にいることが多い側の目線で配置を見直してほしい」

 夏休みで子どもが家にいる時期でもあり、留守番や遊びに出掛けた時に地震や津波が来ることも想定する必要がある。親が共働きでも、沖縄では祖父母や親族が近隣に住んでいる場合も多い。「おばあちゃんの家に行ってと伝えるなど、非常時に誰を頼るかルールを決めておくことも大切だ」とする。

 キャンプや車中泊などを通して避難時の不便さを体験する機会も防災意識の向上につながるとし「災害は子どもにとってつらい経験だが、防災の知識を身につけて家族の役に立つことができたら、成功体験にもなる」と話した。

  (慶田城七瀬)