名護市辺野古の新基地建設を巡り、県による埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相裁決は違法だとして裁決の取り消しを求めた抗告訴訟の控訴審判決。辺野古を巡る県と国との争いはこれまで14件を重ねた。県の訴えは再び棄却され、「門前払い」となった。地方自治の本旨に反するとの訴えや、司法権の独立について疑問を呈した県の主張はいずれも否定されたが、辺野古周辺の住民からは「国は司法の場で正々堂々と議論を」と実質的な審理を避け続ける国への批判も上がった。
名護市辺野古の新基地建設を巡る国と県の訴訟で、2日の福岡高裁那覇支部判決は「訴訟を起こす適格がない」として、県の訴えを入り口で退けた那覇地裁判決を支持した。辺野古に関する訴訟はこれまで具体的な審理に入らず、門前払い判決が多い。ただ、辺野古周辺住民らが国を相手に起こした関連の訴訟では、5月に原告適格を認める判決が出た。原告らは司法の場で実質的な審理をするよう切望している。
国などによる処分の適法性を争う行政訴訟は、原告として認められるまでのハードルが高い。県はこれまで、工事を強行する国に対抗しようと司法に救済を求めてきたが、入り口で退けられてきた。2日の高裁那覇支部判決も、埋め立て承認は国が本来果たすべき役割にかかる「法定受託事務」だとして、県に訴訟を起こす適格がないと判断した。
一方、周辺住民による訴訟では、踏み込んだ議論がなされる期待が高まっている。県による埋め立て承認の撤回に関する訴訟で、高裁那覇支部は5月15日、「新基地建設によって航空機の騒音などの著しい被害を直接的に受けるおそれがある」などとして住民の原告適格を認めた。
国が最高裁に上告したが、住民らは県の不承認処分や国による代執行に関する訴訟も係争中で、実質審理への期待は大きい。
2日の控訴審判決を受け、住民による訴訟の原告団長の東恩納琢磨さん(62)は「多額の税金を投じた事業なのだから、国は裁判で中身を主張すべきだ」と指摘した。
米軍施設は完成後、運用について日本の法の支配が及ばないとした「第三者行為論」が壁となり、司法の場で争いにくくなると指摘し、「完成後では遅い。将来に禍根を残さないよう、国は司法の場で正々堂々と議論してほしい」と求めた。
(前森智香子)