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【記者解説】辺野古の法定闘争は手詰まりも 抗う市民と連携も新たな選択肢に 抗告訴訟・二審敗訴 沖縄


【記者解説】辺野古の法定闘争は手詰まりも 抗う市民と連携も新たな選択肢に 抗告訴訟・二審敗訴 沖縄 沖縄県庁(資料写真)
この記事を書いた人 Avatar photo 安里 洋輔

 名護市辺野古新基地建設の設計変更承認を巡り、県の不承認処分に対する国交相の裁決取り消しを求めた抗告訴訟の控訴審判決で県の訴えが退けられた。県に訴訟を起こす適格性は認められず、中身の判断に踏み込まない「門前払い」とされた形だ。

 福岡高裁那覇支部は、県の埋め立て承認撤回を巡る抗告訴訟の最高裁判決(2022年12月)を例示して、県など地方自治体には「抗告訴訟を提起する適格がない」とした那覇地裁判決を支持。裁決についての抗告訴訟での争いが認められないことが、地方自治の観点に基づく「固有の自治権」の侵害に当たるとの県の主張を再び退けた。

 今回の判決で辺野古を巡る県と国との争いは節目を迎えた。

 15年11月に国が県を相手に代執行訴訟を提起して以降、計14件に及んだ法廷闘争で唯一係争中の訴訟だ。事実認定が争点となるのは控訴審まで。県が上告に踏み切るかは不透明だが、憲法違反や法律解釈の違反にとどまる最高裁で判決が覆る見込みは薄い。

 ただ、辺野古の周辺住民が原告となった関連の抗告訴訟では5月、控訴審判決で市民4人の原告適格が認められている。

 同判決では、市民が、新基地建設で「著しい被害を直接的に受けるおそれのある」とされ、行政事件訴訟法(行訴法)が定める「法律上の利益を有する者」とされた。

 国は上告しているが、国交相裁決の違法性を問う実質審理への道を開く司法判断が下された意味は大きい。

 市民は、23年12月の国交相による「代執行」での承認取り消しを求めた抗告訴訟も提起し、係争中だ。法廷闘争が手詰まりとなった県にとっては、不条理に抗(あらが)う市民との連携も新たな選択肢になりそうだ。 

(安里洋輔)