今回の福岡高裁那覇支部の判決は、国交相の不承認処分取消裁決について県には通常の訴訟である取消訴訟を起こす資格もないとするもので、いわば「門前払い」の判決だ。公有水面埋立法との関係で問題となる知事の処分の適否についての判断を、最高裁第一小法廷はこの間一貫して回避してきた。判決はその流れを汲(く)むものだ。
しかも、判決は、2022年12月8日の最高裁第一小法廷の判決を今回の事件に当てはめるだけでなく、特段の論証もなく、県が取消訴訟を提起できないことは「固有の自治権」の侵害にならないと自治権の保護を求める県の主張を切って捨てている。居丈高にも見える姿勢は厳しく批判されなければならないし、辺野古埋め立てを巡り、司法全体にまん延している消極的な雰囲気を県は上告でもって糺(ただ)すべきだ。
ただ、国交相の代執行による変更承認処分以降、ステージが替わってしまっているので、現時点で不承認処分取消裁決をなおも争うことができるかどうか検討の必要があるかもしれない。
それにしても、今回の判決を経ても、設計概要の変更を不承認とした知事の判断が公水法上、違法であるかどうかは今も実質的には確定していない。現在、県民が代執行による変更承認処分の取消訴訟を提起している。
その主張は実質的には知事の判断を支持するものだ。訴訟技術の便宜からこの訴訟では県も被告となっている。県は、国交相が変更承認をした以上、被告は国であって県ではない旨の主張をするにとどめている。
県と県民が「対立」関係になるのは望ましくはない。にもかかわらず、訴訟の中で県が県民の主張に寄り添う方法はないのか、一考の余地もあるのではないか。
(行政法学)