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日米の通報手続き「隠蔽生む」 沖縄の米兵女性暴行事件を巡り、研究者ら議論 


日米の通報手続き「隠蔽生む」 沖縄の米兵女性暴行事件を巡り、研究者ら議論  「Okinawa Interest Group」が5日、開いたウェビナー。左下がアレクシス・ダデンさん、左上がスティーブ・ラブソンさん、右下が高里鈴代さん
この記事を書いた人 Avatar photo 中村 万里子

 在沖米軍基地に駐留する米兵らによる女性への暴行事件が相次ぐ一方、県に報告がなされなかった問題を受け、海外で沖縄に関心を持つ学者や翻訳家でつくる「Okinawa Interest Group(沖縄関心グループ)」が5日、オンライン(zoomウェビナー)で議論を交わした。米国研究者らは、日米合同委員会で定めた米軍事件・事故の通報手続き事例のあいまいさが事件の隠蔽(いんぺい)につながっているなどと指摘した。

 コネチカット大学歴史学教授のアレクシス・ダデンさんは、1997年の日米合同委員会で定めた米軍事件・事故の通報手続きについて、通報の具体例で航空機、艦船、弾薬、汚染事故などに加え、日本人や財産に重大な損害を与える可能性のある事故や事件を挙げていると紹介した。この表現について「凶悪犯罪にも触れられておらず、非常にあいまいで混乱させる」と指摘し、事件の隠蔽や事態の正常化を図る意図などを指摘した。

 ブラウン大学東アジア学名誉教授のスティーブ・ラブソンさんは1966~68年に米陸軍に所属し、当時の沖縄に8カ月間駐留した。沖縄は米統治下で米軍はインフラや選挙など「全てを支配」し、沖縄の人々が事件や事故で米兵を告訴したくても民事裁判権がなく、軍法会議でも無罪が相次いだと振り返った。

 ラブソンさんは、米軍が沖縄に駐留する理由について「日本政府が駐留予算を負担しているため米軍にとってはコストが安く訓練できる。日本を守るために日本にいる訳ではない」と述べた。米兵の夜間外出禁止令などは「役に立たない。沖縄の米軍が増えるほど問題も増える。唯一の方法は大半の米軍の撤退しかない」との考えを示した。

 ウェビナーではこのほか、「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」共同代表の高里鈴代さんが、米軍基地が集中し、女性への暴行事件が絶えない沖縄の現状を報告した。日本政府が県に事件を報告しなかったことについて、高里さんは「“被害者のプライバシー保護が最優先”を口実にして加害者を守っている」と批判した。 

(中村万里子)