陸上自衛隊第15旅団(那覇市)は10月31日、ホームページを見直す考えを示し、沖縄戦を率いた日本軍第32軍の牛島満司令官の辞世の句をいったん削除した。
ただ、15旅団は「旅団の活動は、地元の皆様のご理解が不可欠」としながらも、見直しの理由は「特段、辞世の句について意見があったからではない」と主張。リニューアル後の掲載復活の可能性も否定していない。
地元の沖縄県民は、15旅団が牛島司令官の句を掲載していたことについて、どのように考えているのか。問題発覚直後の今年6月、糸満市摩文仁や県内各地の慰霊祭で、県内在住・県出身者を対象に記者が100人から聞き取った主な声を改めて紹介する。
賛成(7人) 「隠すことはない」
・隠すことはない。公にして、「戦争とは何か」ということを考え、反省することが大事だ。史実を明らかにするべきである。(80代・元政治家・男性)
・組織内で共有すればいいだけで、外部の人が閲覧できるようにしなければいい。(70代・無職・男性)
・戦時中に戦った人の気持ちを伝えるのも仕事。(60代・管理職・男性)
・沖縄戦の最高司令官。激戦を経て感じたことを歌っているものから得る教訓もあるのではないか。(50代・会社員・男性)
・句の内容が「前に進もう」と前向きな内容に感じられたから。(50代・主婦・女性)
・賛成ではないが、戦争を知らない世代からすると、牛島氏という名前だけが残るよりは、その人の考えなどを事実として後世に残す意味はあると思う。(20代・小学校教諭・女性)
反対(67人)「戦前回帰か」「戦争を美化」「自衛隊の宣撫工作」
・戦前に回帰するつもりか。首里で負けた時に終わっていたらよかったのに、牛島(司令官)は南部まで来て、たくさんの犠牲者、被害者が出た。(90代・男性)
・日本軍の司令官の言葉を掲載し続けるとは、自衛隊はもはや皇国の軍隊と言えるのではないか。県民はもっと怒るべきだと思う。(90代・無職・男性)
・(掲載したものを)撤去して欲しい。この人(牛島司令官)は住民を犠牲にした方。また住民が犠牲になるようなことがあったら困る。(80代・無職・男性)
・沖縄戦自体が間違い。戦争を主導した人の句は適切でない。(80代・無職・男性)
・句の意味を理解しないで、うわべだけだと、牛島氏の死や戦争を美化することになる。(80代・無職・女性)
・国を守るために命を犠牲にするなんて本末転倒。人生を失わせる思想で受け入れられない。(80代・無職・女性)
・自衛隊の宣撫工作だ。絶対認められない。戦争を美化していることだ。(80代・無職・男性)
・宣撫工作。世論を盛り上げるための目論見があるのではないか。(80代・無職・男性)
・戦前の教育のようだ。今の子どもたちには戦争してほしくない。(80代・無職・女性)
・沖縄を捨て石にした人の言葉を残すことは良くない。(80代・無職・女性)
・戦争に近づく動きは絶対に嫌だから。(80代・無職・女性)
・戦争を美化するようなことが次々起こっている。沖縄にとって、何一ついいことはない。(80代・無職・男性)
・戦争を忘れたみたいなやり方。(80代・無職・男性)
・反省の弁がないとだめ。(80代・自営業・男性)
「ウチナーンチュを捨て石にした張本人」「若い世代に負の影響」
・「最後まで戦え」という牛島司令官の句でびっくりした。反対だ。(70代・元看護師・女性)
・ウチナーンチュを捨て石にした張本人。そういった方の辞世の句をいまだに信奉しているなんて理解できない。(70代・無職・男性)
・できるだけ基地を撤去して欲しいという状況下で、軍隊に通じるような文章を掲載するのはおかしい。(70代・無職・男性)
・どんどん軍事化が進んで戦争の方向に進んでいるような気がする。(70代・主婦・女性)
・なぜ英雄化するのだろうか、県民に犠牲を強いた人を。(70代・無職・男性)
・以前の自衛隊はひっそりしていて、今のように「自衛隊、自衛隊」と主張していなかった。辞世の句はやりすぎだ。(70代・無職・女性)
・沖縄戦を指揮し、戦争をした人だ。絶対に許されない。(70代・無職・男性)
・牛島さんは司令官の役割で沖縄に来た方。人柄と立場は違う。立派に死んだと賛美する方向に向かっている気がする。(70代・無職・女性)
・牛島満は降伏に応じずに多くの犠牲を出し、住民に「最後まで戦え」と言って、責任から逃れるように自殺してしまった人。その人の句を反省材料にするならまだしも、日本軍と自衛隊は別の組織だと言いながら、大事に掲載しているのはおかしい。(70代・無職・男性)
・掲示を続ける考え方が怖い。(70代・元看護師・女性)
・時代錯誤。玉砕と言って英雄視しているなんて無責任だ。(70代・無職・男性)
・自衛隊は日本軍ではない。(辞世の句掲載は)引き継いでいるようなもの。(70代・無職・男性)
・戦前の軍国主義を美化している。教育が軍国主義に変える。教育で天皇のために死んでもいいと、人間の心がゆがめられる。教育がまたそういう方向に行きそうな気がしている。辞世の句は犠牲になった沖縄のことを一つも考えていない。むしろ美化してまた軍国主義。天皇のために死んでも良いという子どもたちをまた育てそうな気がする。(70代・元高校教員・男性)
・戦争が美しいものだと誤解を生む。(70代・無職・女性)
・戦争でこれだけたくさんの人が亡くなった。戦争に加担していた人物の句を乗せるのは反対。(70代・無職・男性)
・戦争につながる確率があると思うから反対。32軍と自衛隊は関連性はないけれど、なんとなくその方向に行きつつある。かつ始まってしまったら動きが取れない。戦争につながる確率が高いものに関しては、特に沖縄の人は反対だと思う。辺野古とか色々反対があるが、(国は)自分たちの意見を押しつけるだけでこちらの意見は聞かない。そういう意味での不信感がずいぶんある。(70代・主婦・女性)
・戦中の軍のトップの言葉が残ることは、若い世代に与える負の影響が大きいと思うから。(70代・パート・女性)
・中心人物は好きじゃない。いくら良いことをしたという話があっても、根本的なところでは許せない。(70代・主婦・女性)
・直ちに削除してほしい。美化したらだめ。県民の気持ちを逆なでしている。最後の最後まで住民を戦争に巻き込んだ。首里からの南部撤退の判断もおかしいし、早く降参しておけば地域住民の犠牲をもう少し減らせた。(70代・自営業・男性)
・美化しようとしている。(70代・無職・女性)
・報道をみて嫌だなと思っていた。自衛隊も軍隊としか思えない。(70代・主婦・女性)
・亡くなった父親が牛島司令官の料理官だった。父はそれ以上の話は言わず、牛島司令官のいい事は言わなかった。親族の一人は「戦争で跡取りを亡くした」と文句を言っていた。(70代・自営業・女性)
「自衛隊受け入れと逆行」「沖縄戦の反省どこへ」
・(反対の強さが)「―100」ぐらいのとんでもない話だ。自衛隊が「黎明(れいめい)之塔」にも行っていたが、右翼的思想だ。自衛隊なら中立であるべきだ。海軍の大田実司令官の方が沖縄の話を言っているが、陸軍は違う。(60代・アルバイト・女性)
・自衛隊が受け入れられることと逆行している感じがする。辞世の句を掲げるより、震災対策で入隊した若い人も多いと思うが、ちゃんと伝えないと危険だ。昔の自衛隊は成人式が拒否されたりして気の毒だと思ったが。(60代・保育士・女性)
・なぜ軍隊でないはずの自衛隊が日本軍の司令官の言葉を載せているのか、意味がわからない。過去の戦争のような方向に行くのではないかと心配になる。(60代・建築設計士・男性)
・県民への配慮に欠けている気がする。日本軍と自衛隊は違うと言っているが、このようなことがあると同じに見えてしまう。(60代・主婦・女性)
・沖縄の世相を反映していない。本土中心の考えで掲載していると思う。(60代・会社員・男性)
・沖縄を厳しい状況に追いやった張本人であり、その人物を祭り上げるような取り扱いについては疑問がある。(60代・警備員・男性)
・日本軍と今の自衛隊は同じ体質の組織なのかどうかが問われていると思う。32軍の決定が沖縄の惨状を招いた。その人の辞世の句を広報しているのは、違和感を覚える。(60代・公務員・男性)
・賛同していることになる。(60代・保育士・女性)
・賛美する内容だ。同じことを繰り返すのか、沖縄戦の反省はどこにいったのかと問いたい。(60代・平和ガイド・女性)
・戦争に突き進むことに繋がる。(60代・パート・男性)
・戦争を途中で止めていたらこんなことにはなっていない。辞世の句を詠むくらいなら戦争を終わらせていたら良かったのにと思う。辞世の句は詠みたくない。(60代・無職・女性)
・戦争美化、牛島氏が英雄になってはいけない。自衛隊も歴史を学ばないと。賛美はいけない。(60代・教員・女性)
・日本が起こした戦争。それを忘れている。(60代・無職・男性)
・美化・正当化を感じる。昔、バスガイドをしていて、自衛隊関係者を案内したことがあるが、南部撤退の話をしたら「『撤退』じゃない。『転進』だ」と言葉を換えるよう注意された。今は自分の意見が言えるが、当時はそう言われるとおとなしくしていた。(60代・パート従業員・女性)
・唯一の地上戦で被害を受けた。その指揮をとった人の辞世の句を掲げるのは、県民としては納得できない。(60代・公務員・男性)
・陸自が掲げている意味がわからない。どんな意味があり、何を言おうとしているのか。海軍司令官は「沖縄を頼む」と言ったけれど、陸軍と海軍は全然違う。自衛隊はいざとなれば戦争をやると思われてしまうのではないか。(60代・個人タクシー運転手・男性)
「県民感情を逆なで」「県民は辞世の句、残せず」
・沖縄県民は辞世の句なんて残せず亡くなった人の方が多い。牛島氏のロマンのために死んだ訳ではない。県民がどういう亡くなり方をしたか、大和(本土)は考えてほしい。(50代・無職・男性)
・沖縄戦を経験した県民感情を逆なでする行為だから。(50代・公務員・男性)
・牛島(司令官)は感傷的に辞世の句を詠んだかもしれないが、県民には多くの犠牲が出ており、自衛隊がホームページで掲載することはいかがなものかと思う。(50代・会社員・男性)
・自衛隊の対応はおかしいと思う。防衛省は「旅団に対応を任せている」と話しているが、縦社会の自衛隊で旅団の判断で削除できるのか疑問だ。(50代・教員・女性)
・自衛隊が戦争に繋げるものを掲示するのはいかがなものか。自衛隊に対するマイナスのイメージは薄れて、災害対策などのいいイメージになっていたが、過去のイメージが蘇ってくる。(50代・事務員・女性)
・自衛隊を自国の軍隊と思っているから、このような言葉が出てくるのではないか。載せているということ自体、国は自衛隊を軍隊と認識していることになるのではないか。(50代・会社員・男性)
・戦争を美化するものであるなら反対。(50代・農家・女性)
・日本軍の沖縄戦のトップだった人。かつて漫画で「日本を守るため」というのを読んだが、嘘だと思う。そうした昔の人の句を自衛隊が掲げているのはおかしい。(50代・清掃業・男性)
「日本軍との連続性感じる」
・沖縄戦の遺族感情を考えると、掲載には反対だ。(40代・会社員・男性)
・牛島司令官のご家族の話も聞いたが、複雑な思いを持たれているのはわかる。身近に沖縄戦で亡くした親族もいるので、あの時に32軍の指示がなければ、という思いがある。その人の辞世の句を掲示するというのは一体どういうつもりなのか。(40代・教員・女性)
・戦争の要素が強い。(40代・製造業・女性)
・辞世の句を掲載することで日本軍との連続性を感じてしまう。自衛隊には日本軍の考えが残っているとしか思えない。(40代・図書館司書・男性)
・そこだけ切り取ると、勘違いする人や嫌な思いをする県民が多いと思う。どうして掲載するのか、もっと説明が必要だ。(40代・会社員・女性)
・司令官の孫が32軍司令部壕の保存・公開をやる中で、辞世の句を掲げるのはどういう意味合いで自衛隊はやっているのか。(30代・工芸研修生・女性)
どちらとも言えない(26人)「みんな犠牲者」
・(牛島司令官も)立場のある人は国が命じれば従うしかない。みんな犠牲者。(80代・無職・男性)
・沖縄でホームページに載せることに何とも言えないものがあるが、辞世の句を悪者扱いにするようなものはよくない。牛島司令官の戦争責任とか色んな観点からするとそうだが、(当時の)島田叡知事も国の政策で動いていた。牛島司令官だけというのは割り切れないものがある。(80代・無職・男性)
・その当時は戦うしかなく、牛島さんのみの責任ではないから。(60代・会計年度任用職員・男性)
・辞世の句を詠んだ後に何が起きたのかとセットで辞世の句を出すべきだ。牛島司令官は辞世の句を詠む時間があり、自らの死に際を決めることができたが、そういうことができずに亡くなった人がたくさんいる。自決は沖縄戦の中では相対的に軽い死だ。(50代・大学教員・女性)
・牛島司令官も上の方に命令されているのもあるし、本人の評判はどっちの話も聞いているので、どちらとも言えない。ただ、沖縄戦を思い出すので嫌だという気持ちはわかる。(40代・会社員・男性)