9日未明から明け方に発生した線状降水帯の影響により、沖縄本島北部や鹿児島県与論島で記録的な大雨が降った。東村慶佐次で土砂崩れが複数あったほか、国頭村では比地川が氾濫し、一部住宅が床上・床下浸水。大宜味村では浄水場のろ過池が浸水し、断水した。経験したことのない猛烈な雨に命の危険を感じた住民もいた。季節外れの大雨について、気象の専門家は「気圧の谷に暖かい空気が流れ込んだ」と分析する。
【東】東村平良では潮上川の川岸が崩れ、隣接する飲食店兼民宿の1階にあるトイレや物置が川に落下した。店主の木下富夫さん(77)は午前9時ごろ、トイレの入り口を開けると目の前が川になっており仰天した。2階で就寝中に「ダーン」という音に気づいたが特に気にしなかったという。「今夜も予約が入っているが、どうしたらよいか分からない。今後の生活も不安だ」と顔をしかめた。
国頭地区行政事務組合消防本部によると、東村有銘では床上・床下浸水が5件発生した。住民の金城さやのさん(51)は午前1時半ごろ、外を確認すると自宅から一段低い場所に止めていた車が半分ほど冠水していることに気づいた。
水位は約2~3分で急激に上昇。自宅にも水が入り始め、金城さんは胸の高さまで水につかりながら高校生の息子と共に泳いで近くの実家に避難した。避難時に玄関のドアは水圧で開かなかったといい「パニックになり死ぬかと思うほど怖かった。初めてで、とっさの判断もできなかった」とため息交じりに振り返った。
東村では観測史上最大の24時間雨量486・5ミリを観測した。住民からは「たたきつけるような今まで経験したことのない雨だった」、「いきなり台風のような風が吹き怖かった」といった声が上がった。
村内では村慶佐次の国道331号など複数の場所で土砂崩れが発生した。慶佐次の現場はツール・ド・おきなわのコースの一部となっており、視察した関係者は「これはだめだ」と肩を落とした。東村や大宜味村では9日午後まで時折強い雨が降り続けた。