沖縄県民は日本一の宝くじ好き? 断トツの購入額に「火の神」伝説まで…一度に14億円出た場所も!高額当選の売り場はどこ


沖縄県民は日本一の宝くじ好き? 断トツの購入額に「火の神」伝説まで…一度に14億円出た場所も!高額当選の売り場はどこ
この記事を書いた人 Avatar photo 古堅一樹

「宝くじで1億円が当たったら何に使おうか…」。誰しも一度は空想したことがあるのでは?そして、どうせなら高額当選の実績がある売り場で買いたいと望むのではないだろうか。

 7月4日には1等・前後賞を合わせて7億円が当たるサマージャンボ宝くじの販売が始まった。

沖縄県内で過去に1億円以上の高額当選が出た売り場を調べてみると、数億単位の高額当選を何度も重ねているところや、10億円以上の当選が出たところが複数あることが分かった。さらに実際に高額当選の出た売り場を訪ねてみると、当選者が夢をつかんだ瞬間の様子をうかがい知ることもできた。

(古堅一樹)

2014年の年末ジャンボで1等や1等前後賞を合わせて計14億円もの当選が出た那覇メインプレイスチャンスセンター=沖縄県那覇市おもろまち

宝くじの販売や当選金支払いなどの事務を受託しているみずほ銀行宝くじ部によると、「ジャンボ宝くじ」で1億円以上の高額当選が出た沖縄県内の売り場は、統計が残る2014年以降で9カ所あり、計21本の当選が出たという。

みずほ銀行のまとめたデータから、実は沖縄県民が「宝くじ好き」だということも判明した。

■購入額は3年連続で全国1位 

1人当たりの宝くじ購入金額を都道府県別で比べると、2017~21年度の5年間のうち、沖縄は4回も1位を記録し、残る1回も2位と常にトップクラスにいる。2019~21年度は3年連続で1位だった。

2021年度の1人当たりの購入額をみると、1位の沖縄は9933円で、2位の高知(8950円)に983円もの差をつけた。

なぜ沖縄は購入額が高いのか? みずほ銀行宝くじ部に尋ねると「私どもにも分りかねます」と一言…。

はっきりとした理由は不明だが、全国各地で宝くじ売り場の「チャンスセンター」を運営しているビーエヌシーの那覇支店長を務める今村隆志さんは「沖縄の人は宝くじの購入をライフスタイルとして楽しんでいただいているという肌感覚はある」という。

 ■昔は「ヤクザな政策」

宝くじが沖縄で常に人気だったかというと、そうでもないようだ。例えば日本復帰前、米統治下時代の1961、62年に琉球政府が財政難の改善も狙って1等3000ドルの宝くじを1枚25セントで発行したが、思うようには売れなかった。 当時の琉球新報には、その不人気ぶりが記されている。

1961年11月28日付の夕刊コラムには「琉球政府が〝捕らぬタヌキの皮算用〟をもくろんで売り出した宝くじの評判が思わしくなく」「沖縄の人たちの射幸心が非常に低いことを計算に入れなかったのは大きな誤算だったかもしれない」と批判の文字が並ぶ。

2日後の11月30日の社説の見出しには「宝くじなんてヤクザな政策である」。琉球政府が「赤字補塡(ほてん)のため〝宝くじ〟を発行したが、売れゆきが悪くついに政府職員に非常措置としてこれを押し売り」したと記し、琉球政府に対して「もっと真剣に沖縄の将来を考えてほしいものである」と断じた。

このように当初は不人気だった宝くじ。しかし、沖縄が1972年に日本復帰して以降、現在の流れをくむ宝くじは一転して人気となった。

長い購入客の列ができた宝くじ売り場=1976年5月11日、勧業銀行那覇事務所前

沖縄の日本復帰から約半年後の72年11月6日。「第1回沖縄宝くじ」が発売された。沖縄を含めて全国一斉に発売され、1等賞金は1000万円だった。

発売日の琉球新報紙面には「きょう『沖縄宝くじ』発売 地元では十万枚 一等1000万円なり」の見出しが踊り、記事では「百円が1000万円に・・・」「『一晩飲んだつもりで・・・』と、一人で五十枚、百枚買おうと予算を組んで発売日を待つ人も多く」などと夢が膨らむ様子に触れている。

当時の1等はどうなったのか。11月18日付の琉球新報によると1等は沖縄から出なかったものの、3等100万円が県内から出たと報じていた。

それでは、現在の沖縄の宝くじの状況はどうか?

■高額当選が出た売り場はここ!

まずは気になる高額当選売り場について。 県内では、2020年の年末ジャンボ宝くじでは1等7億円1本に加え、1等の前後賞1億5000万円の2本がいずれもやんばる物産(名護市)から出た。3本同時に計10億円もの金額だ。

さらに高額当選の例も。2014年の年末ジャンボ宝くじでは、1等5億円が那覇メインプレイスチャンスセンター(那覇市)から2本も出た。さらに1等前後賞の1億円が4本も出たという。この6本を合わせると実に計14億円もの高額当選が同じ売り場から出たことになる。

■14億円の裏に「火の神」伝説?

2014年の年末ジャンボで前後賞など合わせて14億円もの当選が出た那覇メインプレイスチャンスセンターでは当時、売り場の販売員がそれぞれの自宅のヒヌカン(火の神)に手を合わせて売り場の購入者から高額当選が出てほしいと願ったという。

ヒヌカンは沖縄の各家庭にあり、台所にまつられる神様。販売員の間では「ヒヌカンにお願いしたおかげかな」と伝説のようになっているという。

次に紹介するのは2020年の年末ジャンボで1等と1等前後賞合わせて計10億円の当選が出た「やんばる物産センター」。その宝くじ売り場は、名護市の「道の駅許田」の中にあり、これまでもしばしば高額当選者が出たことがある場所だ。

沖縄で台所にまつられる一般的な「ヒヌカン」

やんばる物産センターの担当者に、過去の当選者エピソードを教えてもらった。本島北部在住とみられる女性がジャンボ宝くじに当選した際、女性は購入したくじを開封せずに抽選日を迎え、窓口の従業員に開封して結果を確かめてほしいと依頼してきたという。

番号を確認した従業員が1等3億円の当選を伝えると、女性は驚きのあまり固まり、その場から動けなくなってしまった。気を落ち着かせるため道の駅内の別室で休み、夫の迎えを待ったという。

売り場従業員の中で最も長い勤務歴約20年の40代女性従業員によると「宝くじを購入した後に開封せず、仏壇や神棚に置いて拝むなど願を掛け、売り場の窓口で従業員に開けてもらう人も多い」といい、地元客だけでなく旅行のついでに購入していく観光客も多いという。

物価が高騰し、電気代も値上がりする昨今。日々の生活も厳しさを増す中で、「1等なんてぜいたくは言わない。少しでも高額の宝くじが当たったら…」と夢見る人も少なくないだろう。

宝くじ公式サイトに掲載されている「宝くじ長者白書」にそのヒントがあるかもしれない。

2020年の年末ジャンボで計10億円の当選が出た「やんばる物産センター」の宝くじ売り場=沖縄県名護市許田

■夢をつかむ人の傾向は

「宝くじ長者白書」とは、高額当選者へのアンケート結果をまとめたものだ。

390人が回答した最新の令和3年度版をみると 「購入時にこだわったこと」という項目では「連番・バラの割合」を挙げた人が82人(21%)で最も多く、次いで「買う日にち」が54人(14%)、「高額当せん売り場」が51人(13%)と続いた。

宝くじを購入する際に何らかの験担ぎをした人は約8割を占めた。験担ぎの内容で最多は「良い事があった時に購入」(52人、13%)、次いで「お参りにいく」(41人、11%)、「トイレや部屋の掃除」(36人、9.2%)だった。「その他」を選んだ人も163人(42%)おり、アンケートの選択肢にはない独自の験担ぎを持つ人が多いことも分かる。

白書では他にも当選者たちの職業や年齢、売り場を選んだ動機、購入枚数などの多彩な項目を質問している。 これだけ統計があるのなら、わずかでも当選確率を上げるための傾向をつかめないものだろうか。

答えは予想できたが、みずほ銀行宝くじ部の担当者に直球で聞いてみた。答えは…やはり「一概には言えない」。

連番かバラか。紙で買う人もいればインターネットで買う人もいる。特定の売り場で買うと決めている人もいる。「一獲千金」を目指すルートはまさに十人十色だ。 そして今日も宝くじ売り場には販売員の「当たりますように」の声が繰り返し響く。

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