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【識者談話】対米従属、沖縄犠牲に 辺野古代執行訴訟、県敗訴 江上能義(琉球大名誉教授)


【識者談話】対米従属、沖縄犠牲に 辺野古代執行訴訟、県敗訴 江上能義(琉球大名誉教授) 江上能義 琉球大名誉教授(政治学)
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 元副知事の比嘉幹郎氏は、米国が1949年の対日政策決定(NSC13号の3)で沖縄の米軍基地の長期保有を決めたことが今日までの沖縄の運命を決定づけたと、私に語った。沖縄は72年に日本に復帰したが、米軍基地の維持が最重視される構図は変わらない。比嘉氏は「米軍基地問題は復帰しても期待できなかった」と言った。

 名護市辺野古の新基地建設を巡る代執行訴訟で、最高裁が県の訴えを門前払いしたことは、75年前に決まった構図が今も続いていることを表している。高裁判決では「国と県とが相互理解に向けて対話を重ねることを通じて抜本的解決の図られることが強く望まれている」などと「付言」をつけたが、これが精いっぱいだ。対米従属一辺倒の日本政府の卑屈な態度が沖縄にさらなる犠牲を強いている。

 国の「私人なりすまし」を容認するなど日本の司法には期待できない。司法が実質的な審理を拒否するなら、沖縄で公開の法廷をつくり、国の主張と県の主張を闘わせる試みを行ってはどうか。討論を通して世論を喚起できるだろう。

 かつて元知事の大田昌秀氏は「沖縄の人は、本土の人間やアメリカ人と同じ人間なのに人間扱いされていない。いつも政治的な手段に利用されている。こんなことは許されない。同じ人間なのだから」と述べた。沖縄は民主主義の範囲外なのだろうか。この状態を放置してはならない。 

(政治学)