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【深掘り】中国軍の台湾包囲演習、「偶発的な衝突」の危険性も デニー知事「最大限の配慮を」


【深掘り】中国軍の台湾包囲演習、「偶発的な衝突」の危険性も デニー知事「最大限の配慮を」 台湾周辺を航行する中国軍の艦船=23日(台湾当局提供・共同)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 中国軍は23、24の両日、台湾を包囲する海空域で軍事演習を実施した。中国は台湾で20日就任した民主進歩党(民進党)の頼清徳総統を独立派と見なして軍事的威嚇を強めている。日米は一体化を深めて中国をけん制するように県内などで大規模な演習を繰り返してきた。各国とも実際の衝突は避けたいはずだが、意図せず偶発的な衝突が発生する危険性がある。

 中国は台湾統一の手段として武力行使の選択肢を放棄していない。台湾を取り囲む形での演習を重ねるが、あくまで示威行動とみる向きが強い。自衛隊関係者は台湾への圧力と米軍へのけん制が中国の狙いだとし「侵攻の意図はない」とみるが「中国の行動は長期的に見て過激化しており、偶発的な衝突には注意は必要だ」と語った。

 2022年8月、中国軍はペロシ米下院議長(当時)の台湾訪問に反発して弾道ミサイルの発射訓練を実施した。与那国島北西の訓練区域などに着弾し、一部が日本の排他的経済水域(EEZ)内に落ちた。

 今月の演習ではミサイル発射は確認されておらず、22年演習との差異が注目される。防衛省幹部は「実際に撃っていなくとも台湾を取り囲む形で演習を展開している。中身を分析しなければ、何とも言えない」と慎重姿勢だ。

 中国軍が軍事演習を通じて台湾に圧力をかけるのに対し、自衛隊と米軍も中国を念頭に県内などで大規模な演習や共同訓練を繰り返してきた。24年度も最大級の日米共同統合演習「キーン・ソード(KS)」や陸上自衛隊と米海兵隊の実動訓練「レゾリュート・ドラゴン(RD)」などを計画している。6月には米軍がこれまで別の地域で実施していた大規模演習について、自衛隊を招いた上で日本の基地や自衛隊施設にも展開する。日本以外にも複数の国が参加する。

 木原稔防衛相は「中国は日本周辺全体での活動と台湾周辺での軍事活動を活発化させている」として警戒監視活動に万全を期す考えを示した。一方で米軍演習への自衛隊参加について「日米同盟の抑止力・対処力を強化し(米国以外の)同志国とのパートナーシップ拡大を図ることは極めて意義が高い」と強調した。

 双方が威嚇するように大規模な軍事演習を積み重ねれば、地域の緊張の高まりにつながる。偶発的な衝突に発展する危険性も否めない。玉城デニー知事は中国軍の演習に「地域の不安定さを招くことがないよう慎重に行われるべき」としつつ、日米の共同演習について「民間の活動に影響がないよう最大限の配慮を求めていく」と語った。

 (明真南斗、知念征尚)