パリ五輪水球の予選リーグ最終戦が5日、パリ・ラ・ディフェンス・アリーナで行われ、日本がオーストラリアに14―13で競り勝った。途中交代した県勢のGK棚村克行(ブルボンKZ)は司令塔としてチームを動かし、好セーブを連発して勝利に大きく貢献した。日本は予選1勝4敗で目標の決勝トーナメント進出は果たせなかった。
2連続失点で最終盤に同点に追いつかれた日本。残り44秒。相手の攻撃権でGK棚村は落ち着いていた。「勝ち負けじゃなく、淡々と自分のやることをやるだけ」。相手シュートがポストに当たり、棚村から足立聖弥にパスが渡る。カウンターシュートが決まると、この日一番のゴォーという歓声がうなりを上げた。
開始から4連続失点で、第1ピリオド残り約3分で棚村が投入された。後方から声掛けし、味方に圧を掛けさせたり、下がらせたりして相手攻撃を断ち切る。「どれだけ相手が嫌なタイミングで切り替えられるか」。第2ピリオド途中からの約6分間の無失点の時間に逆転に成功した。
棚村は前に出て相手センターへのパスを奪ったり、18本中9本のシュートを防いだりと圧倒的な存在感を放った。最後は劇的勝利を収め、プールで仲間と手を握り合い、「個人の成績よりチームが勝ててよかった」と喜びに浸った。
予選初戦は出番がなかったが、途中交代で成果を残し出場時間を増やしていった。「前半戦から出たかった。個人としては僕が出れば勝てたと思っている」と悔やむ。
東京五輪後はスタメン起用が減ったが、いつ出ても活躍することを目標に取り組んできた。「まだまだ成長過程にある。すぐ次のオリンピックに向けて準備したい」。やめられなくなったというトレードマークのもじゃもじゃひげから、自信たっぷりの笑みを浮かべた。
(古川峻)