(1)ギョーザに見るサンエーの経済学


この記事を書いた人 Avatar photo 玉城江梨子

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サンエーのお肉屋さんの餃子

 沖縄県内の主婦の間で人気の商品がある。沖縄県産豚肉を使ったサンエーの「お肉屋さんの餃子」だ。安いときには18個入り約200円で販売されている生ギョーザ。那覇市の40代の女性は「冷凍して常備している。夕食にもおつまみにもなる。この値段でこのクオリティーは驚き」と話す。

 ギョーザは冷凍食品の定番だが、冷凍でも10個で300円程度が相場だ。食品メーカーでもないサンエーがなぜ、この価格で生ギョーザを出すことができるのか。それを読み解くとサンエーの強さが見えてくる。

業界トップクラスの利益率

 大型の機械から次々に生ギョーザができあがる。「ギョーザは5~6種類がこの機械から出て行く。機械がフル稼働しているからあの値段で生ギョーザが出せるんです」。豊田沢取締役は明かす。「お肉屋さんの餃子」だけでなく、総菜の焼きギョーザに精肉コーナーの揚げギョーザ、フランチャイズの外食店「大阪王将」で出されるギョーザ。原材料は一括で仕入れ、レシピを変え、数種類の餃子をここで作り、自社の流通網を使って各店舗に配送する。各店でするのは揚げる、焼くといった最後の工程のみ。そのため、スケールメリットを生かしコストを抑えることができるのだ。

  県内でスーパー、外食店など85店舗を展開し、売上高は2021年9月に発表した22年上半期こそ減収したものの、通期では一貫して右肩上がり。21年2月期の連結営業収益は2000億円を突破した。売上高は1985年度以降、県内小売業界トップの座に君臨する。

 沖縄国際大学の宮城和宏教授は県外企業も含めたスーパー業界と比較して、サンエーの特徴の一つに利益率の高さを挙げる。企業分析サイト「業界動向サーチ」によるとサンエーの2021年2月期の売上高は1891億円で業界26位だが、経常利益は95億円で15位。最終的な利益である純利益では60億円で13位。さらに利益率は3・2%で5位。経営の安定性を示す自己資本比率は73・3%と業界トップだった。つまり規模では業界平均だが、利益率が高く安定した経営を行っていることが分かる。

 その経営の安定性を支えているのが、ギョーザの例でも見ることができた独自の流通システムとフランチャイズ戦略だ。

最初は苦戦した食品部門

 1970年に那覇に1号店を開店したサンエーは最初は衣料スーパーとして出発した。77年から食料品にも参入。今でこそ食料品部門は売り上げ全体の6割を占めているが、最初から順調だったわけでない。当初は店舗ごとに商品の加工、包装、値付けを行っていたため、コストがかさんでいた。

 これを解決するために独自の物流網を構築した。82年に子会社のサンエー運輸を設立。84年には流通センター、85年に流通センター内に生鮮加工センター(現在の食品加工センター)を整えた。

全店で扱う総菜や生鮮品を加工する食品加工センター=宜野湾市大山(サンエー提供)

 宜野湾市大山のサンエー本社の目の前にある流通センターは大型トラックが行き交う。流通センターには、取扱商品のほとんどの値付け、仕分け、検品を行う「DCセンター」と、生鮮加工や総菜を製造する「食品加工センター」がある。産地やメーカー、問屋から仕入れた商品はここを経由して、各店舗に自社のトラックで1日5回配送される。商品を一元管理し、自社で物流網を構築することで、細分化されたニーズに応えると同時に大幅なコストダウンにつなげている。

 豊田氏は「特に生鮮品はセンター化することで大量製造できるので、品数をそろえることができる。それだけではない。店舗内で加工だと各店に加工場を作らないといけない。するとその分売り場が減るし、加工場に人も充てないといけない。結果コストがかかり、商品の値段に跳ね返る。よい商品をできるだけローコストで出すために、センターには磨きをかけている。センターの規模でしか会社は成長できない」と力を込めた。

(玉城江梨子)

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