prime

【業界の変遷図あり】「琉球・那覇」と「沖縄・東陽」で業界二分 買収で路線バス再編始動 合理化、利便性向上に期待


【業界の変遷図あり】「琉球・那覇」と「沖縄・東陽」で業界二分 買収で路線バス再編始動 合理化、利便性向上に期待 (左)沖縄バス本社=19日、那覇市泉崎 (右)東陽バス本社=19日、南城市佐敷新里(小川昌宏撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 沖縄バスが東陽バスの買収を発表し、路線バス業界の新たな再編が動き出した。運転手不足や県民のバス離れなど長年の課題によって業界を取り巻く環境は厳しさを増している。運行の合理化などを通じ、経営改善や利便性向上につなげられるかが焦点となる。

 沖縄本島の主要会社は沖縄バスと東陽バスに加え、琉球バス交通と那覇バスの計4社。このうち、琉球バス交通と那覇バスはタクシー全国大手の第一交通産業(福岡県)の傘下にある。今回の買収劇で、バス業界は「沖縄・東陽」と「琉球・那覇」という構図に色分けされる。

 所有するバスの台数は、沖縄バスは4社のうち2番目、東陽バスは4番目の規模となっている。

 運転手不足や需要減少を背景に、2023年は各バス会社で減便が相次いだ。24年1月には琉球、那覇の2社が4月の値上げを申請し、東陽バスや沖縄バスでも値上げ是非の検討などを進めている。4月に迫る、時間外労働の上限規制が厳格化される「2024年問題」への対応も課題となっている。

 今回の買収について、県交通政策課の担当者は「競合する本島南部の路線合理化やダイヤ改正が進み、乗客にもいい影響を与えるのではないか」と期待を込める。

 東陽バスの従業員の雇用は維持されるという。沖縄バス出身で、バスや沖縄都市モノレールの労働者でつくる私鉄沖縄の喜屋武悟委員長は「東陽バスと沖縄バスの労働環境は違う。公共交通を維持するためにも、今後の調整が重要だ」と話した。

 (當山幸都、梅田正覚)


統合議論、過去にも 乗客減やモノレール対応

 1990年代以降、沖縄本島のバス会社は乗客減少や沖縄都市モノレールの開業を見据えて再編を本格的に協議してきた。97年から県と那覇交通、琉球バス、沖縄バス、東陽バスの沖縄本島バス4社は統合を協議したが、2003年に沖縄バスが資金調達案に反対し、とん挫した。

 統合計画がついえたことで、倒産する会社も出た。03年には「銀バス」の愛称で親しまれた那覇交通が多額の負債を抱え民事再生手続きを開始したが、04年に大手タクシー会社の第一交通産業(北九州市)へ営業を譲渡し、名称を那覇バスに変更した。

 県外資本である第一交通は、06年にも負債を抱えて民事再生手続きに入った琉球バスの営業権を譲り受けた。第一交通の県内バス事業シェアは過半を超える。

 東陽バスは02年に民事再生手続きに入り、12年に会社を分割。路線バスと観光バスなどの営業部門を新会社「東陽バス」(南城市)に譲渡した。旧会社は14年に倒産した。沖縄バスは今回、この新会社を子会社化した。

 (梅田正覚)

2社の沿革

 沖縄バス 1950年に公営バスから民移管して創業。一般乗合(路線・定観・空港リムジン)179台、貸切バス60台の計239台の車両を有し、従業員数は354人(2023年12月時点)。本社は那覇市泉崎。県内の乗り合いバス会社の中で唯一、倒産したことがなく、本島全域で運行している。

 東陽バス 2012年創業(旧東陽バスは1951年)。旧会社は2002年に民事再生法の適用を申請。12年に会社分割され、新東陽バスは本社を南城市に移転した。本島の東南部を中心に運行。一般乗合64台、貸切バス31台の計95台の車両を有し、従業員数は166人(23年3月末時点)。