国頭村で漁師をしている勝ちゃん、こと山城善勝さんの人生と戦後の沖縄を重ねたドキュメンタリー「勝ちゃん―沖縄の戦後」(監督・藤本幸久、影山あさ子、製作・森の映画社)が16日から那覇市の桜坂劇場で上映される。由美子ちゃん事件、宮森小米軍ジェット機墜落事故、コザ騒動、名護市辺野古の新基地建設。これらの当事者として居合わせた勝ちゃんは作中で実体験を語る。
影山監督と勝ちゃんの出会いは2004年ごろ。ボーリング調査をしていた辺野古で、新基地建設に反対する漁民のリーダーが勝ちゃんだった。影山監督は勝ちゃんの人生を丁寧に積み重ねると、「焼け野原から一生懸命に生きてきた沖縄の庶民の戦後があった」と作品への思いを語った。
勝ちゃんは1944年10月4日に石川市(現うるま市)の生まれ。食べものを探して幼少期に海に潜っていたことが漁師となる原点。米軍から物資を非正規に調達する「戦果アギヤー」や、米兵相手のタクシー運転手などをして命を落としかけたこともあり、そんな日々と決別するため海に戻った。
海に網を仕掛けて魚の群れを単独で追う「一人追い込み漁」の姿などを、水中カメラマンの新田勝也さんが撮影した。影山監督は「基地や辺野古の埋め立てに反対する理由を感じてもらいたい」と美しい海の世界とその恵み、海に支えられる勝ちゃんを追う。
同社の作品は反戦や反新基地建設をテーマをしてきた。今作品は、基地を必要とせずに人が「どう生きていくか」がテーマ。影山監督は「勝ちゃんのように海あるいは土があれば人は生きていける」と、平和を実現するための人の生き方を映す。
映画上映は29日まで。16、17日の午後1時から、勝ちゃんと影山監督の舞台あいさつもある。チケットなどの詳細は桜坂劇場のホームページに掲載。
(嘉手苅友也)