
沖縄の日本復帰50年に合わせ、玉城デニー知事は10日、首相官邸に岸田文雄首相を訪ね、今なお残る課題解決のほか、普天間飛行場の運用停止や辺野古新基地建設の断念、県民の望む将来像の実現を要求する「平和で豊かな沖縄の実現に向けた新たな建議書」を手渡した。玉城知事によると、岸田首相は「受け止めたい。県民との意思疎通を図り、思いを持って建議書を読みたい」などと述べた。名護市辺野古の新基地建設反対を掲げる玉城知事はこの問題に関する対話の場を設けることも求めた。
一方、松野博一官房長官は10日夕の記者会見で、普天間問題について「辺野古移設が唯一の解決策」と改めて移設を進める方針を示した。日米地位協定の改定にも消極的な従来の見解を示した。
玉城知事によると、岸田首相は会談の場で、県民所得の改善や「子どもの貧困」の解決、基地負担軽減に向け「努力する」と語った。辺野古新基地建設の是非に絞った議論はなく、対話の場を設けるかどうか岸田首相は明言しなかった。
細田博之衆院議長や山東昭子参院議長、在日米大使館のジョン・ナイリン公使参事官にも建議書を手渡した。西銘恒三郎沖縄担当相にも会い、建議書の提出を報告した。
玉城知事は「思いをしっかりと受け止めてもらえたと感じている。政府には、復帰当時の人たちの思いや今の県民の思いを踏まえ、沖縄を平和の島にするという目標や自立的発展の実現に取り組んでほしい」と語った。
県が政府宛ての建議書をまとめるのは1971年以来、2度目。当時の琉球政府の屋良朝苗主席は建議書を首相らに提出したが、提出前に沖縄返還協定は衆院特別委員会で強行採決された。
新たな建議書は「復帰時に県と政府が共有した『沖縄を平和の島とする』目標は、50年が経過した現在もいまだ達成されていない」と指摘。日米地位協定の抜本的見直し、自立経済の構築を求めている。
(明真南斗まとめ)
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