お土産はシーサー?台湾の離島に「沖縄」があった 約2キロ先に中国を臨む金門島の「風獅爺」【WEB限定】


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180センチもある風獅爺。集落の守り神として入口に立っている=2022年12月31日

 お土産品店に入ると、シーサーのような置物がずらりーー。まるで沖縄のような光景が見られるのが、台湾の金門島だ。台湾と言えども、最短で2キロ先の対岸には中国・厦門市が見える。中国・福建省から伝わる文化が根付きながらも、その地理的位置から中台の対立に影響される。そんな金門島で見つけた、シーサーみたいな守り神「風獅爺」を紹介する。(デジタル編集・田吹遥子)

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■「あうん」じゃない、民家にはない風獅爺

 那覇空港から金門島に到着し、空港を出るとすぐに目に入ったのは丘の上にたたずむ大きなシーサーのようなもの。沖縄のシーサーより明らかに大きく、立っているスタイル。これはシーサーではなく「風獅爺(フォンシーイェ)」と言う。

 風獅爺は沖縄と同じく中国・福建省から伝わった。金門島には明の時代に伝わり、現在は100体以上の風獅爺があるという。

 沖縄のシーサーは、民家の門に「あうん」の対をなして置かれてあるのが一般的だが、金門島の風獅爺は民家にはなく、各集落の入口にある広場などにある。風獅爺の前には香炉と線香などが置かれ、沖縄の「御願所」みたいな雰囲気だ。

空港近くの丘に見えるシーサーのような銅像。風獅爺だった=2023年1月1日
風獅爺の足元には香炉などが置かれている

  金門島の街中を歩くと、店先などでマスコット的に置かれた風獅爺を見ることができる。

店先で見つけた風獅爺=2022年12月31日
観光地にあったレゴでできた風獅爺=2022年12月31日

  お土産店に入ると、ここは沖縄かと見まがうほどの風獅爺グッズも…。観光地となっている映画館の跡地にはレゴでできた風獅爺もあった。

小金門島内のお土産品店に並ぶ風獅爺の置物。沖縄のお土産のようだ=2022年12月30日

 

■風獅爺の役割

 シーサー同様に魔除けの意味だけでなく、金門島ならではの役割を担っている。

 離島である金門島では、冬になると海から強い風が吹き付ける。気温自体は沖縄の冬に近いが、冷たい風が吹くため、体感温度は下がる。台湾出身のガイドによると「冬にも台風みたいな風が吹く」とのことで、沖縄よりも風は強く、体感温度はその分冷たい。
 風獅爺に「風」の字があることからも分かるように、そんな強い風を防ぐのも風獅爺の役目だそう。

金門島にある主な風獅爺のマップ

 もう1つはその地理的位置だ。対岸にある中国の都市、厦門までは最短で2キロほどしか離れていない。沖縄本島だとサンエー浦添西海岸パルコシティの海岸から湾を挟んで北谷町美浜の街並みが見えるが、距離的にも見え方もその感覚と近い。

 1958年の「第二次台湾海峡危機」では、中国本土から多くの大砲が撃ち込まれた。金門島への大規模な砲撃は「金門島事件」とも呼ばれ、1958年8月23日から10月5日にかけて50万発の大砲が打ち込まれた。

 さらにその前には海賊が攻めてくることもあった。ガイドは「風獅爺には外から島を守る意味もあった」と話した。

 金門島の風獅爺、沖縄のシーサー。この共通する文化を互いの観光に生かそうというプロジェクトが立ち上がった。それが、金門島で風獅爺、沖縄でシーサーを探すゲームアプリ「シーサーをさがそう」や、記者が参加したモニターツアーだ。ツアーでは沖縄と金門をチャーター便で結んだ。海外から金門島へのチャーター便自体が今回が初めてという。

 プロジェクトに携わる彭國豪さんは、台湾で旅行会社を経営し、沖縄の観光地を紹介する最大規模のFacebookグループを運営している。彭さんは「金門島と沖縄の文化は似ている。これをきっかけに人と人の交流を深めたい」と意気込んだ。


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