沖縄県の第32軍司令部壕保存・公開検討委員会(玉城辰彦委員長)は27日、沖縄戦の悲惨な体験と教訓を風化させることなく次世代に継承するため、壕の保存・公開、平和発信に取り組む必要があるとする提言書を玉城デニー知事に手渡した。2026年をめどに文化財指定を進めることや、第1坑口と坑道、第5坑口の整備を優先し、段階的に壕の保存・公開に取り組むことなどを提言した。
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玉城知事は「これが最後のチャンスだ。壕を通して沖縄戦の実相を継承し、平和を希求する沖縄の心を国内外に発信していきたい」と述べ、着実に取り組む姿勢を示した。
第32軍司令部壕の保存・公開を巡っては、1990年代に大田県政が計画を策定したものの、稲嶺県政で断念。2012年度に仲井真県政は「一般公開は不可能」と結論づけていた。
首里城火災後、世論の高まりから玉城県政は21年1月に検討委員会を設置。委員会では壕の全貌把握や文化財指定と公開の両立を求める意見などが出され、検討を重ねてきた。提言書は公開に当たって安全対策を講じる必要があるとしている。
玉城知事は整備財源について「どこかの段階で国への財政的な要請もしなければならないと思うが、県もできることはやっておきたい」と述べた。長野県と連携協定を結び、大本営が本土決戦に備えて沖縄戦の最中に構築した松代大本営地下壕を訪れたことにも触れ、平和学習の連携にも意欲を示した。
県は第5坑口は25年度、第1坑口は26年度の公開を目指す。第1坑道も公開に向け、状態確認や保全対策を進める。24年度に本格的に設置する有識者委員会で基本計画を策定し、具体的な整備範囲や方法などを決定、それに基づき対応する。
平和発信・継承の取り組みとしては文献資料調査や平和教育・学習への利活用方法の検討、専用ホームページでの発信などを行う。
(中村万里子)
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