圧巻! 肉が溺れる「沖縄そば」 母の味守り、肉屋だからできる“そば” 【どローカル リポート】


圧巻! 肉が溺れる「沖縄そば」 母の味守り、肉屋だからできる“そば” 【どローカル リポート】 お肉の店仲村の沖縄そば「スペシャルそば大」
この記事を書いた人 Avatar photo 高辻 浩之

 毎月29日は語呂合わせで「29の日」。浦添市仲西の「お肉の店仲村」では、県産豚を盛りに盛った圧巻の沖縄そば「スペシャルそば大」が話題となっている。丼からはみ出た本ソーキ、食べやすく半身にしたテビチがどっさり。その下には、スープの中に三枚肉が敷き詰められ、もはや麺の存在を忘れるほどだ。

 丼を抜いた重量は2キロ超、肉屋だからこそ提供できるそばだ。沖縄市から来た男性は「想像以上の量。食べても減らない」と頰張る。来店客らが交流サイト(SNS)で取り上げたことなどをきっかけに、今や県外や海外からの観光客も訪れる。

肉屋ならではの肉々しい沖縄そば「スペシャルそば大」

 店は店主の仲村直光さん(62)の母・初枝さん(89)が1969年に浦添市内で始め、2016年に現在の場所へ移った。

 サラリーマンを早期退職した直光さんと初枝さんが移転を機に、店の空きスペースで母手作りのそばの提供を始めた。直光さんは「これまでたくさんのそばを食べてきたが、母の味が一番好きだった。肉屋ならではのそばを出そうと思ったら、こうなった」と笑う。鍋や容器を持参する客もいて、無理はせずに持ち帰ってと呼びかける。

豚の枝肉をさばく父の文吉さん(89)

 具材は朝一番に届けられる県産豚の枝肉約35キロを、父の文吉(ぶんきち)さん(89)がこの道70年の技術で手際よく切り分ける。骨はだし骨に、脂はラードやあんだんすー(油みそ)に利用する。古くから言われる「豚は鳴き声以外は捨てる所ない」との言葉を実践している。だし骨から作られる「骨汁」も好評で、1日限定5食を求め、開店前から客が順番を待つ。

だし骨から作った一日限定5食の「骨汁」

 迫力のそばもさることながら、直光さんと妻の利恵子さん(63)ら店スタッフの愛嬌あいきょうの良さも店の魅力の一つ。おなかがいっぱいでも、「しーぶん」(おまけ)が付いてくることもある。利恵子さんは「お客さんに『損してませんか?』と心配されたこともあるが、大丈夫。来た人が喜ぶ顔を見るのが何よりうれしい」と接客を楽しむ。

鍋を抱えテビチを移す妻の利恵子さん(63)
三枚肉をスライスする店主の仲村直光さん(62)

 母の初枝さんはコロナ禍に店を引退した。コロナ禍で客足は遠のき、母の味を再現するのに苦労したという直光さん。「母のスープは、今よりコクがあったと思う。父の肉の解体技術も継承したい。今後も堅実な仕事で、家族で培ってきた味を守っていきたい」とそば熱は冷めない。

 (高辻浩之)

いずれも前列左から、母の初枝さん(89)と父の文吉さん(89
昼ごろの「お肉の店仲村」の店内