染み出るうま味、独特の歯応え、ゴロゴロ転がる 癖になる味わい鶏の「ざる焼き」が人気【どローカルリポート】沖縄


染み出るうま味、独特の歯応え、ゴロゴロ転がる 癖になる味わい鶏の「ざる焼き」が人気【どローカルリポート】沖縄 店の看板メニューの「ざる焼き」
この記事を書いた人 Avatar photo 高辻 浩之

 もうもうと煙が辺りを包み、炭がパチパチと音を上げ燃え盛る。その上で金属のざるの中を鶏肉がゴロゴロと転がり、香ばしい焼き色にあぶられていく。一口頰張れば、独特の弾力と染み出るうまみが癖になる。浦添市西原の「鶏幸2号店」では沖縄ではめずらしい、炭火を使った本格の「ざる焼き」が人気を集めている。店長の有吉秀一郎さん(49)は「味付けは塩こしょうのみ。あとは愛情がたっぷり」とちゃめっぽく笑う。

 7歳まで那覇で育った有吉さん。その後、九州に引っ越したが、20代の時に8年ほど沖縄の飲食店で勤務し、2022年に再び沖縄に拠点を移し、浦添市内で飲食店を始めた。「20年ぶりに帰って来たら、沖縄はだいぶ変わっていた。方言を使う人も減ったし、昔はあちこちで民謡が聞こえた」と懐かしむ。

  店は持ち帰り専門の屋台で5月にオープンした。炭火であぶった焼き鳥のほか、有吉さんの第二の故郷でもある九州の「みつせ鶏」の親鳥を使った「ざる焼き」が看板メニューだ。ほどよい弾力と脂が乗った鶏肉を、炭火で一気に焼き上げる。特製の辛みそをからめれば、さらにうまさが引き立つという。

癖になる歯応えとうまみで人気の「ざる焼き」

 店は年中、白い煙に包まれ、有吉さんは燻製状態になりながらも手を休めない。「毎日、煙と格闘している。炭と煙がうまみが増幅させ、病み付きになる」と話し、目をしばたたかせる。

 日が傾くと、香りに誘われた客が絶えない。「めっちゃ、いい匂い」と近所の子どもたちが寄ってくることも。「地域のオジイやオバア、子どもたちがおしゃべりしに来るアットホームな店にしたい」とはにかむ有吉さん。商品を片手に家路を急ぐ、客の背中に「ありがとうございます。気を付けて」と、いつも心遣いを欠かさないところも味わい深い。

煙とともに食欲そそる香りが立ち上る屋台=浦添市西原