地域住民に少しでも元気を与えたい―。沖縄県東村平良の「かねやん食堂」で12日のお昼時、販売されていたのは「100円弁当」。オーナーシェフの金子竜太さん(39)が、沖縄本島北部の豪雨で被災した住民らに、おいしい食事を取ってもらおうと1日限定で販売した。
復旧作業に当たっていた地域住民や作業員らが手を止めて、弁当を買い求め、温かい食事に、ほっとした表情を浮かべた。
提供されたメニューは、オムライスや唐揚げ、カレー、店自慢のローストポークの弁当や、シイタケのだしを使った沖縄そばなど5種類で、250食分用意したという。取り組みはSNS(会員制交流サイト)で呼び掛けられたほか、地域住民には口コミで広がった。近くの農家からシイタケなどの食材、農場からはアイスクリームが提供されるなど、支援の輪も広がった。
山梨県出身の金子さんは、2022年2月にかねやん食堂を始めた。2年半、店を経営してこれたのは地域住民の支えがあったからだと感じているという。
金子さんは「東村内も道が通れなくなり、大宜味村は水も使えていない。暗い雰囲気を感じる中、片付けをしていると思う。ご飯くらいは、おいしいものを食べてほしいと思った」と話した。
大宜味村塩屋から訪れた女性(54)の自宅は、9日から12日朝まで断水が続いた。「ずっとストレスがかかっていた。お弁当はありがたい」とほっとした様子で語った。
友人が東村から60リットルの水を持ってきてくれたり、名護市内のお風呂を個人的に開放してくれたりした。「災害時は情報が入りにくい。周りの人たちに助けられた」と振り返った。(池田哲平、山本真知子通信員)