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辺野古埋め立て「中止まで死んでも死にきれない」 沖縄戦で父親を亡くした女性と海 サンゴ訴訟即日結審


辺野古埋め立て「中止まで死んでも死にきれない」 沖縄戦で父親を亡くした女性と海 サンゴ訴訟即日結審 新基地建設に向けた作業船が浮かぶ大浦湾を見渡す松田藤子さん=名護市の瀬嵩の浜
この記事を書いた人 Avatar photo 増田 健太

 名護市大浦湾沿いの集落、汀間区に住む松田藤子さん(83)は14日、湾を一望する瀬嵩の浜で「こんなにきれいな海を埋め立てるのかと思うと悲しい。日々ショックを受けている」と声を落とした。

 辺野古新基地建設予定地の大浦湾側は、埋め立て予定地を囲むようにフロートが設置され、見慣れない大型の作業船が浮かぶ。新基地建設を巡る複数の訴訟で、県は厳しい立場に立たされている。松田さんは「なぜ国は聞く耳を持たず、工事を進めようとするのだろう。この海から生活の糧を得てきた人たちは、悔しい思いをしている」と唇をかむ。 

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 金武町生まれの松田さんは名護市の久辺小学校で教員生活を始め、1972年に家族で汀間に居を構えた。砂浜でよく採れたという白いハマグリを自宅で近所の人々に振る舞ったこともある。
 地域の人々に請われ、定年退職後、2014年に市民団体「辺野古・大浦湾に新基地つくらせない二見以北住民の会」の会長に就任した。「ただの主婦だったが、引き受けた。大浦湾が見えるこの瀬嵩の浜に(集会などで多くの人に)来てもらいたかったから」
 フロートの設置が進む浜で集会を企画し、計3回実施。延べ千人を超える人が集まったという。松田さんもマイクを握り「宝の海に新基地は造らせない」と訴えた。


 今でも浜には学生らが研修などで訪れるが、新型コロナの影響や戦争体験者の減少から、会として声を上げる機会が減っていると感じる。
 自身も沖縄戦で父親を亡くし、母子家庭で働きながら勉学に励む苦労を味わった。「いつまで沖縄を差別するのだろう。埋め立てを中止するまでは、死んでも死にきれない」と語り、国への不信感は消えない。

(増田健太)