有料

国の暴挙、地方自治を否定 「沖縄だけの話ではない」 元名護市長・稲嶺進さん


国の暴挙、地方自治を否定 「沖縄だけの話ではない」 元名護市長・稲嶺進さん 代執行に対して「まさしく国の暴挙だ」と話す稲嶺進さん=26日、名護市内
この記事を書いた人 Avatar photo 武井 悠

 米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、国は28日、沖縄防衛局による地盤改良工事の申請を県に代わって承認する代執行に踏み切る。辺野古移設反対を明確に訴え、2010年から2期8年間名護市長を務めた稲嶺進さん(78)は、国による丁寧な説明がないまま代執行が行われることに「まさしく国の暴挙で、民主主義も地方自治もない」と憤る。

 市長当時、稲嶺さんが移設に反対していることなどを理由に、国は米軍再編交付金を打ち切り、基地建設を強行する姿勢を崩さなかった。当時と現在の状況を比較し「国の態度は変わらない。司法も含め分断と差別の政策が、沖縄に限って『これでもか』という形でずっと続けられてきた。今回の代執行は差別政策の極みと言える」と嘆く。
 代執行前日に当たる27日はくしくも、13年に仲井真弘多知事(当時)が埋め立て申請を承認して10年の節目。稲嶺さんは、仲井真氏が10年の県知事選では普天間飛行場の県外移設を掲げた経緯に触れ「青天のへきれきで、(仲井真氏が言った)『いい正月』どころか断崖絶壁から突き落とされる思いだった」と振り返る。

 地方自治法に基づき、国が地方自治体の事務を代執行するケースは今回が全国初となる。稲嶺さんは今回のケースを前例に今後、全国で適用される可能性があることに危機感を示し「県外の自治体や国民が自分事として受け止める必要がある。沖縄だけの話ではあり得ない」と話す。
国は来年1月12日にも工事を開始する見込みだ。稲嶺さんは「黙っていれば認めてしまうことになる。不条理は絶対に許せないと、強く抗議で示していく必要がある」と語り、引き続き県民が一丸となって強く訴える重要性を語った。 

(武井悠)