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「県外からの土砂、沖縄に二重三重の加害」市民ら断念訴え 奄美から採取 辺野古新基地 


「県外からの土砂、沖縄に二重三重の加害」市民ら断念訴え 奄美から採取 辺野古新基地  新基地建設のため積まれた石材=2024年2月、名護市の辺野古崎
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 名護市辺野古への新基地建設を巡り、日本政府が大浦湾の埋め立てに必要な土砂を鹿児島県・奄美大島から採取することを検討していることを受け、奄美大島や沖縄県内関係者からは自然破壊を懸念する声や新基地建設断念を求める声が相次いだ。

 奄美在住で、「自然と文化を守る奄美会議」の共同代表を務める薗博明さん(89)は「よその島から土砂を運んでまで基地をつくる必要はない」ときっぱり。過重な基地負担を抱える沖縄で米軍基地を広げる辺野古の工事に反対の姿勢を貫く。

 同会議は、特定外来生物の移出入を禁止する条例の制定を鹿児島県議会に求めるなどしてきた。今回、政府が「土砂を洗浄することで(沖縄)県外から搬入可能」と判断した点について、薗さんは「外来種の侵入を防ぐのは難しいのではないか」と懐疑的だ。奄美では現状、採石によって海が赤土で汚染される被害があり、「辺野古への搬出が始まれば、本土からも業者が参入し被害が拡大するのでは。奄美の自然も壊される」と懸念した。

 薗さんと同様に奄美の自然破壊を懸念するのが辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会共同代表の阿部悦子さん(74)だ。阿部さんは新基地建設について「軟弱地盤に造れるわけがない。沖縄にとって本土は加害者側。県外から土砂を沖縄に送ることは二重三重の加害になる」と指摘した。

 沖縄戦犠牲者の遺骨が残る本島南部の土砂採取をやめるよう求める、沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さんは「南部からの土砂採取撤回を明言したわけではない」と話し、運動を続ける方針だ。奄美からの採取について「世界自然遺産にも登録されている奄美の自然も生物多様性の豊かな大浦湾もどちらも壊すことになる」と新基地建設の断念を求めた。

 (岩切美穂、吉田健一、慶田城七瀬)