名護市辺野古の新基地建設を巡り、埋め立て用の土砂を奄美大島から調達する国の計画が明らかになったことについて、県自然保護課によると、19日までに沖縄防衛局から届け出や事前調整などはないという。県条例で県外からの土砂の搬入は規制されているが、政府は洗浄することで搬入可能とみているとされる。ただ、土砂の洗浄は不可能との指摘も上がっている。
特定外来生物の侵入防止を目的に県外からの土砂などの搬入を規制する県条例は、県内への搬入予定日の90日前までに用材の種類や数量、外来生物の混入確認や防除の実施などについて届け出ることを定めている。
条例は2015年、県議会の与党議員らが提案し成立。県は専門家からの意見聴取や現地の確認などを行い、特定外来生物が付着、混入していると認められる時には搬入や使用の中止を勧告できる。事業者が従わなかった場合は公表することができるが、罰則などの法的拘束力はない。
沖縄防衛局は条例施行後、条例の適用回避を念頭に、埋め立て用土砂を県内で調達する方針を固めた。しかし、本島南部からの土砂調達について、戦没者の遺骨が混じった土砂が使われる可能性があるとして強い反発が生じていた。
県自然保護課によると、施行後、条例が適用された事業は那覇空港の第2滑走路増設事業のみ。事業者の沖縄総合事務局は当初「特定外来生物の生息は確認されなかった」として特別な防除策は講じないとしていた。条例に基づく県の調査で、奄美大島の採石場周辺など6地点全てで特定外来生物のハイイロゴケグモが確認され、県は防除策を助言した。総合事務局は石材の洗浄の強化や運搬時にシートを掛けるなどの対策をした。
大浦湾側に投入される土砂の中には、「細粒分」と呼ばれる細かい成分の含有が多く、粘土に近いものも予定されていて、洗浄による防除は不可能だと指摘する声もある。沖縄平和市民連絡会の北上田毅氏は「那覇空港の工事は石材だったので洗浄ができたが、土砂の洗浄はありえない」と指摘。県に対して「環境保全という条例の目的に沿って、本格的な、毅然(きぜん)とした対応をしてほしい。県の姿勢が問われている」と求めた。
(慶田城七瀬、沖田有吾)