この夏、沖縄防衛局が新たな軍事施設の建設に向けて、サンゴ礁が広がる海で掘削調査を始めた。米軍那覇港湾施設(那覇軍港)を移設する浦添西海岸だ。県と浦添市は容認しているが、浦添市内で記者が100人に話を聞くと、環境悪化を懸念する声が広がっていた。
調査は、浦添市内で県内在住者を対象に、8月5~13日に実施した。質問は(1)那覇軍港の浦添移設を知っているか(2)軍港移設への賛否(3)浦添西海岸を埋め立てて民間港やリゾート開発をする計画への賛否。3問すべてに回答する人が100人(男女各50人)に達するまで続けた。
73人が軍港移設を知っていると答えた。
「本当は夕日がきれいで、潮干狩りにもいい場所なんだが…」
そうこぼした男性(85)は「那覇軍港がなくなるのだから仕方がない」と軍港移設に弱い賛成の「プラス1」を選んだ。
軍港の移設予定地は、2019年に開業したサンエー浦添西海岸パルコシティ前の海域だ。米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー)の存在で開発を逃れ、サンゴ礁に囲まれた浅い海が広がる。
公務員女性(35)は「パルコシティで食事をしながら海を見るのを楽しみにしている。目の前の一等地を埋め立てて軍港にするなんて反対」。元理容師の上原幸子さん(74)も「海を自然のまま生かすのではなく、何か造るのが沖縄の美しくないところだ」。2人は軍港移設に強い反対の「マイナス3」を選んだ。
基地への納入業者の女性(45)は「どちらとも言えない」を選んだが、本音を語った。「表立っては言えないが、海を埋め立てて造らなくてもいい」
半数に近い48人が環境悪化への懸念を口にした。軍港移設には賛成18人、反対64人。軍港移設と平行して浦添市土地開発公社と那覇港管理組合が進める民間港やリゾート開発のための埋め立ても、反対が42人で賛成(36人)を上回った。
(南彰、藤村謙吾)