家計で負担する教育費について取り上げるシリーズの第6回。今回は「通学費」について考える。
沖縄では通学に路線バスを利用する高校生が多く、毎日の出費となると見過ごせない問題だ。交通機関が不足しているため保護者が自家用車で送迎するケースもある。「通学費」の家計への負担はどれほどなのか?保護者のリアルな声や、県の支援事業をまとめた。
■県の支援は?
「中高生の通学費無料化」は沖縄県の玉城デニー知事が掲げる公約の一つだ。
現在、県は(1)バス通学費等支援事業(2)遠距離等通学費補助金、大きくこの二つの支援事業を実施している。
まず(1)の 「バス通学費等支援事業」について。
非課税世帯を対象とした支援策だ。
2023年度は県の予算申請時の予定人数(国公立のみ)の4324人に対し、今年8月末時点で認定者数はすでに予定数を超える4471人に上っている。だが、県の担当者は「予算の過不足は、認定数に加えて利用実績の推移を踏まえており、現段階では今後も利用者の認定は可能と考えている」と述べ、予算に達するまで支援を続ける考えだ。
同事業で私立学校に通う中高生などの申請状況について、県総務私学課によると、8月末時点の認定者数は514人で、予定人数の467人を超えた。同課も予算に達するまで対象者の募集を続けていく考えだ。
続いて(2)の「遠距離通学による通学費支援(通学費の一部)」について。
世帯年収目安が590万円以下で、毎月1万5千円以上の交通費を使う中高生らを対象にしたもの。
1カ月当たりの利用額が1万5千円を超える分を支援している。
■コミュニティバスも
県の通学費支援事業で利用できるバス会社は、路線バスでは、琉球バスや那覇バス、沖縄都市モノレールなど。さらに、町村が運行するコミュニティバスも対象で、国頭村営バスと久米島町営バス、9月1日からは中城村の「護佐丸バス」も加わった。
護佐丸バスは、2015年度途中から運行を開始し、現在は早朝便(伊集普天間線、久場琉大線)と日中便(伊集回り線、久場回り線)の計4路線がある。同村企画課によると、護佐丸バスの利用者は、「小学生」、「中学生」、「一般」、「高齢者」で区分しており、早朝便を利用している「一般」はほぼ高校生と推測されるという。
2020年以降の「一般」利用者数は右肩上がりで、年間5405人だったのに対して、21年は6243人、22年は6507人に上った。主な行き先は、宜野湾市普天間高校付近の「普天間りうぼう」と同市「中部商業高校前」の2カ所という。
「護佐丸バス」が県通学支援事業に含まれたきっかけは、今年6月の中城村議会で比嘉麻乃村議が支援の必要性を指摘したことだった。比嘉村議は「路線バスが通っていない地域に住む生徒もいる。路線バスに乗れない家庭にも通学支援を受ける権利があるが、現状は平等になっていない」とコミュニティバスでの通学支援も大切だと強調し、そのうえで「ほかの市町村にも広がってほしい」と訴えた。
県は現在、他1自治体とコミュニティバスへの支援適用を協議しており「今後引き続き各自治体とも意見交換していきたい」と対象拡大へ意欲を見せた。
■進学先決定にも影響
2022年度に県が県内の公立高校59校の2年生とその保護者を対象に実施した「沖縄子ども調査」によると、高校への進学時に通学交通費を「非常に重視した」「やや重視した」との回答は「低所得層」で半数近くあり、経済的な負担感が進路決定に影響している実態が浮き彫りになった。
また調査の中で、通学のために「自家用車で送迎している」と回答した保護者は全体の約6割を占め、その理由としては「通勤のついで」が23・4%と最も多く、「交通費削減」が23・2%と続いた。
自由記述では、通学費の家計へのひっ迫を訴える声が並んだ。
「公共交通では乗り換えに時間がかかるため、自家用車で送迎している。ただ、ガソリン代の負担が大きくなり困っている。バス・モノレールの交通費も金額が大きく、子どもの希望する学校への進学も悩む」
「県の支援策は、ある程度の収入がある(家庭には)利用はできない。自費でのバス通学が高額になり、家計に大いに影響がある」
生徒からは、「バス代を学割にしてほしい」、「非課税世帯じゃないけどきょうだいが多く経済的に苦しい。バイトして交通費は自分で払っている。交通費免除してほしい」といった、支援の対象拡大などを求める声が相次いだ。
(隔週金曜掲載)
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