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わが家に適した奨学金、どう選ぶ? 情報の入手先と注意点とは「比べる!備える!家計から出る教育費」(10)県内自治体の奨学金


わが家に適した奨学金、どう選ぶ? 情報の入手先と注意点とは「比べる!備える!家計から出る教育費」(10)県内自治体の奨学金 奨学金(イメージ写真)
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 家計で負担する教育費について考えるシリーズの第10回は、県や市町村の「公的」な奨学金について取り上げる。主に「民間」の奨学金について紹介した前回の記事はこちら

 県内に住む40代の夫婦は、14~20歳まで4人の子どもを育てる。20歳の長女は県内大学に通い、地元の市町村から給付型の奨学金を受けている。2人目以降の子どもは、中高校生で、これから進学を控える。

 「幸い、上の子は成績が良かったので給付型の奨学金もいただけた。しかし、下の子たちがそうなるかは分からず、不安だ」と妻は明かす。

 4人全員を大学へ進学させたいが、大学4年間の授業料と入学料の合計は、国立大学で242万7452円。私立や県外なら倍増し、さらに子どもの数だけ膨らむ。「これほど学費が高いとは」と驚く。

 共働きだが、生活費や車のローン、修理費の返済などで手元に残るお金はほとんどない。家計がぎりぎりの中、今後も続く子どもたちの進学でも奨学金を活用していきたいと考えている。

沖縄県、二つの「給付型」奨学金

 家計が厳しい家庭ほど、給付型の支給を望む。公的な奨学金にも給付型が増えており、沖縄県も(1)県外進学大学生奨学金(2)高校生等奨学のための給付金―の2種類の給付型制度を実施している。

 まず(1)県外進学大学生奨学金は、東京大学など県外難関大学への進学を支援する奨学金だ。入学支度金30万円と月額7万円を給付する。国の「修学支援新制度」との併用はできない。募集時期は、例年6月~9月。入学支度金は期限までに請求すれば、3月中に支給する。

 県によると、2024年4月に大学へ入学した学生による応募総数は114人。しかし、そのうち進路変更や国の修学支援新制度を利用しているなどの理由で、83人が選定から除外され、実際に受給できたのは25人にとどまった。

 もっと広く活用できるように対象者を拡大できないのか。県は「24、25年度に国の制度がさらなる拡大と計画されていることから、具体的な支援内容や状況を確認しながら検討したい」と説明している。

 続いて(2)高校生等奨学のための給付金は、生活保護受給世帯や非課税世帯に扶養されている高校生らが対象だ。

 家計が急変して非課税世帯相当となった場合も、対象となる可能性があるという。支給額が年額で、対象者の状況によって支給額も異なる。申請期間(目安)は、例年7月からとなっている。

 今後の拡充予定について、県は「全国一律の国庫補助事業なので、現時点で24年度以降の拡充予定はない」とした。

返済不要の給付型、市町村も増加

 市町村でも給付型を新設する例が増えている。

 県内11市では、9市が2024年度2月現在で給付型の奨学金を設けている。卒業後に返済する貸与型の奨学金は各市町村とも育英会組織や教育委員会を窓口に実施している。県内11市の奨学金情報をまとめた。

 各市の奨学金情報の詳細は、下記をクリック↓

▼那覇市の奨学金(給付型・貸与型)

▼沖縄市の奨学金(給付型・貸与型)

▼うるま市の奨学金(貸与型・入学準備金)

▼浦添市の奨学金(給付型・貸与型・資格目的)

▼宜野湾市の奨学金(貸与型・入学準備金)

▼豊見城市の奨学金(給付型・貸与型の入学準備金)

▼名護市の奨学金(給付型・貸与型)

▼糸満市の奨学金(貸与型・給付型)

▼宮古島市の奨学金(給付型)

▼石垣市(給付型・貸与型)

▼南城市の奨学金(給付型・貸与型・入学準備金)

「アンテナの張り方」で大きな差に

 全国で奨学金に関する講演会や相談会を開く奨学金アドバイザーの久米忠史さん(まなびシード代表)は「民間の奨学金制度の方が、『活用のしやすさ』で進んでいることが多い」と公的な奨学金の課題を挙げる。

 例えば、他の奨学金制度との併用が可能かどうかという点だ。県の給付型の制度も併用をめぐる条件を理由に、応募者の中で、受給できる対象者が限定された。

 久米さんは、全国的に一般論として「自治体は他の奨学金との併用を『不可』としていることが多い」との傾向を指摘し、より柔軟な対応を求める。

 

国の「給付型」に欠点、那覇市が補う

そんな中、県内の市町村の中でも「那覇市の給付型奨学金は素晴らしい。国の給付型制度の欠点も補完している」と久米さんは、高く評価する。どんな特徴があるのか。

 それは、大学などの入学金の納付時期と密接に関わる。大学の入学金の納付時期は、合格してから1~2週間後が多く、高3の2~3月となる傾向がある。

 一方、公的な奨学金は、支給が決まっても、実際の支給時期は大学へ入学した後の4月以降になる傾向がある。いったん別の手段で入学金を確保して納付する必要に迫られることも少なくないという。

 国の奨学金制度を運営する「日本学生支援機構」(JASSO)によって減免された入学金や授業料のうち、本人が負担する分について、那覇市は給付型奨学金で支給している。高3の生徒に対し、納付時期に間に合うように、いったん入学金を立て替えることが可能な柔軟性があるのだ。

 久米さんは「同じ仕組みを(経済的に厳しい世帯も多い)北部や離島こそ導入してほしい」と話し、先進事例として、他市町村への広がりに期待した。

 市町村でも「入学準備金」の枠を設ける例が増えているが、支給できる採用枠はまだ限られる。

 高3までの早い段階で、申請時期や支給時期などもあらかじめ確認して手続きを進めていくことが、自分に合う奨学金を見つけることにつながる。申し込む時期を勘違いして、申請時期を逃してしまう例もあるため、注意が必要だ。

 

どこから情報を入手

 早めに情報を入手する方法として、どんな手段があるだろうか。まずは、高校の進路指導の教員にも相談し、進路指導室や進学先の大学のサイトなどで調べる方法もある。さらに、奨学金の情報を集約したサイトもある。

 久米さんは、多様な奨学金を検索できるウェブサイトとして、「ガクシー」と「Crono My奨学金」という二つのサイトを挙げた。

 近年、この二つのサイトを活用する人が増えていると話す久米さん。それぞれのサイトが奨学金全体を完璧に網羅しているとは言えないものの、参考になるという。

 申請可能な奨学金は、遠慮して限定せずに、複数申し込むことを勧める。「最初から『受給は無理ではないか』と思わず、だめもとで申請してほしい。多い生徒は、20団体応募する例もある」と話す。

 奨学金についての情報の入手法や自分に適した奨学金を選び、応募していく際に大切な視点は何か。まず、入学金に納付期限がある場合、それに間に合うかも確認した方がいい。さらに、複数の奨学金の候補があって、併用が不可な場合、どちらを選ぶ方がメリットがあるか比較して判断することも大切だ。ひとり親世帯、離島に住む地域による優遇なども確認しておきたい。

 奨学金の情報は、県内の各高校に送られている。ただし「(運営主体が広く広報するような)プッシュ型にはなっていない」と指摘する久米さん。「あらゆる情報を集め、活用している親子は恩恵を受ける。積極的に情報を集めているかどうかで違いが出る」と強調する。

 「親子でアンテナを張り、大学に入学してからも活用できる奨学金がないか、チェックした方がいい」と呼びかけた。

(古堅一樹、呉俐君)

次回は2月16日公開予定

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