長崎や沖縄などを舞台にした映画「彼方の閃光」(監督、脚本・半野喜弘)が北谷町のミハマ7プレックスで公開中だ。視覚障がいで色彩を感じられない主人公の光が、東松照明の写真に引き寄せられて長崎と沖縄を旅し、戦争や平和を考える物語。今回が映画初主演となった若手実力派俳優の眞栄田郷敦さんに話を聞いた。(聞き手・田吹遥子)
―初主演映画が公開された。今の気持ちは。
「全国に公開されたことに意味があると思う。公開できてうれしいです」
―視覚障がいで色を感じられないという役。どのように役作りをしたのか。
「色が見えないことを物理的に表現するより、内面の部分を大事にしたいと思いました。光が長崎や沖縄に行っていろんな人と出会って、世の中のいろんな面を知っていく部分を大事に演じました」
―難しかったのは。
「池内博之さんが演じる友部の、話す内容への理解が脚本で難しい点でありましたけれど、演じている中ではドキュメンタリーみたいな部分も大きくて。光なのか自分なのか分からない瞬間も多かったです。特に沖縄に来てからは、ロケーションの力や、糸洲を演じている尚玄さんの芝居のテイストがナチュラルだったこともあり、すごくナチュラルな気持ちでできたかなと思います」
―糸洲の案内で沖縄のさまざまな場所を訪れる。印象に残った場所は。
「轟(とどろき)の壕(ごう)に行く経験ができたことは、映画を撮影する上でもすごく大事なことだったと思うし、(戦争を)身近に感じられる場所に行けたのはすごくよかったです」
「(戦時中)あそこに本当に多くの人がいて、『体育座り』をしてぎゅうぎゅう詰めになっていたと。話を聞くだけよりも実際に行ってみると、大勢の人がいたとは考えられないような環境でした。作品の中でも光を消す場面があるのですが、消すと真っ暗で、外に出た時の太陽や光のありがたさ、温かさをすごく感じました」
―映画を撮影する前と後で、沖縄の印象や戦争に対する思いに変化はあったか。
「僕自身、戦争というと、少し遠いことのように感じていた部分がやっぱりあって。撮影を通して壕などいろいろな場所で話を聞いて、撮影の中でも見て知っていく中で、この映画の大きなメッセージでもありますけれど、戦争は理屈じゃなくて、だめなんだと。難しいことがわからなくても、戦争はだめなんだということを少しでも伝えていく、伝える立場になってきたと思う。それが本当の意味で大事なんだと心の底から思えました」
―撮影時のエピソードを。
「みなさん温かいなと感じました。沖縄に来てすぐに市場でセミエビを見るシーンとか、店員さんはキャストじゃなくて地元の方だったんですけど、すごくフレンドリーで温かかったです」
―好きな沖縄料理は。
「沖縄料理、結構好きで。ラフテーめっちゃ好きなんですよね。アグー豚のしゃぶしゃぶとか。あとシメがステーキなのがうれしいですね。撮影中はめちゃくちゃステーキ、食べていましたね」
―映画初出演作(「小さな恋のうた」)と初主演作どちらも沖縄が舞台。身近に感じる県民も多いかも。
「なんか、僕もそれを感じてて。初映画が沖縄で、初主演も沖縄で。芸名の『眞栄田』も、沖縄に寄せたわけではないんですけど、沖縄でよくある姓と聞いて、自然とそういうご縁を感じますね」
―父親の千葉真一さんも沖縄で映画撮影をした。沖縄のことを聞くことは。
「父親もすごく沖縄が大好き。沖縄だったり、長崎だったり。戦争のことは父親から聞いていました。中学生ぐらいまでは日本にいなかったんですけれど、戦争を経験したことは、物心ついた頃から自分の中にありましたね」
―沖縄の人にメッセージを。
「沖縄の方々には、特に見てほしい作品になっています。169分の長さはあるんですけど、その長さが必要な作品。僕が演じさせてもらった光と共にいろいろなものを感じながら、自分に問いかけながら、一緒に歩んでいけるような時間になっていると思います」
詳しい上映期間などはスターシアターズのホームページで確認できる。