家計から出る教育費について考えるシリーズ「比べる!備える!家計から出る教育費」の4回目となる今回は、高校卒業後の教育費について考える。高校卒業後に進学する際、入学金や学費などを含め、大きな金額を準備する必要がある。沖縄の保護者は教育費の何に悩みにどう備えているのか。リアルな声を紹介しつつ、さらに「お金のプロ」に対策を聞いた。
母子家庭、娘の希望を叶えたい
県内自治体で会計年度任用職員として勤務する50代の女性は、高校3年生の娘(17)を育てる。娘は高校卒業後、県外の私立大学でビジネス心理学を学びたいと希望している。心理学に興味があり、ビジネスも学べることが志望理由だ。沖縄で受験できること、親離れして成長したいとの思いもある。
月収は15~18万円で非課税世帯。一人親になってからは、銀行の定期預金で月2万円を貯めている。その上で、学資保険と複数の奨学金を併用する形で申請している。貯蓄、学資保険、奨学金の三つを組み合わせて備える考えだ。
学資保険は娘が8歳の時に契約し、毎月8840円を支払ってきた。10年満期で106万800円。先日、18歳の満期を迎え、100万円の振り込みがあった。娘の進学準備金にあてる。
奨学金は「日本学生機構」の給付型奨学金と貸与型奨学金を併用する形で申請中。6月に高校で開かれた高3の保護者向けの奨学金説明会で知った。決定通知後に金額が決まるが、一人親世帯の月給付額は満額で7万5000円だという。
さらに100円ショップを運営する企業の関連団体の給付型奨学金も申請した。小論文と必要書類をそろえ、ウエブで申請した。決定通知は12月頃の予定で、月の給付額は5万円。考えつく奨学金は申請し、学資保険も備えるなど、手は尽くしたか、それでも不安は尽きない。「子どもの希望校への進学を実現するため、何が必要かなど、専門家にアドバイスをしてほしい」と望む。
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私立でも文系・理系で金額差
そもそも、大学や短期大学、専門学校など進路別には、いくら必要になるのだろうか。文部科学省がまとめた「国公私立大学の授業料等の推移」によると、2021年度の国立大学の1年間の授業料は53万5800円、入学料は28万2000円。私立大学の平均は授業料93万943円、入学料は24万5951円となっている。
この資料に基づいて、大学4年間の授業料と入学料を合計すると、国立大学で242万7452円、公立大学で253万6757円、私立大学で396万9723円が目安となる。ろうきん「大学進学準備ガイドブック」など、金融機関の資料によると、私立大学の場合、理系コースはさらに高く500~600万円が目安。私立大学の医歯科系コースは在学する6年間で総額2000万~3000万円にも上る。短期大学や専門学校は2年間で計200~300万円が目安になるという。
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これだけの金額を子育て世代は、どのように準備しているのか。琉球新報社は、無料通信アプリLINE(ライン)の公式アカウント登録者らを対象にアンケートし、36人から回答を得た。「高校卒業後を見据えた教育費を貯めているか」について聞いたところ63.9%に相当する23人が「貯めている」と答えた。このうち、高校卒業までに貯める子ども1人当たりの目標金額については「目標金額はないが、貯めている」が6人と最も多く、「100万円」「200万円」「400万円」が3人ずつだった。
「高校卒業後の教育費をどのように準備する予定か」も複数回答で聞いた。最も多いのは「貯金」63.9%(23人)で、「奨学金」41.7%(15人)、「学資保険」25%(9人)などが続いた。
「高校卒業後の教育費の備えについて悩んでいること」を複数回答で聞いたところ、「教育費を貯める家計の余裕がない」が最も多く58.3%(21人)、次いで「子どもが希望する進学先に必要な教育費を確保することが難しい」38.9%(14人)、「教育費をどのように貯めるのか相談できる人がほしい」22%(8人)などだった。
そのほかにも、保護者からは次のような声が寄せられた。
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手法別、メリットとデメリット
教育費を準備する選択肢や、手法ごとの特徴は何か。県内各地の高校などで、教育費の備えなどについてセミナーを開いているファイナンシャルプランナーの慶田城裕さん(有限会社ライブアップ代表)に聞いた。
主な選択肢として慶田城さんが挙げたのは①奨学金②学資保険③変額保険④現金の積み立て貯蓄⑤少額投資非課税制度(NISA)などの投資運用⑥教育ローンの六つ。
手法別のメリット、デメリットは次の通りだ。
【奨学金】学費や生活費の給付や貸与
・メリット=給付型は返済の必要がなく、貸与型も低い利子で借りることができる。
・デメリット=子どもが返済することになる。
【学資保険】貯蓄型の保険
・メリット=強制的に教育費を確保できる。
・デメリット=支払い額の方が上回って元本割れする可能性もある。
【変額保険】保険会社が投資信託などを運用し、保険金や解約返戻金が変動する
・メリット=まとまった金額を増やすことができる。
・デメリット=市場の相場により、投資信託の価格にプラス、マイナスの値動きがある。
【現金の積み立て貯蓄】定期預金、財形貯蓄など
・メリット=金額が減らない。いざという時、いつでも使える。
・デメリット=金額が増えない。途中で他の目的に使ってしまう可能性もある。
【少額投資非課税制度(NISA)などの投資運用】投資信託などを運用
・メリット=長期運用で、まとまった金額を増えすことができる。利益分の税金を払わなくてもいい。
・デメリット=プラス、マイナスの値動きがある。減ることもある。
【教育ローン】金融機関などから保護者が借りる
・メリット=教育資金が足りない時に借りられる。
・デメリット=金利が奨学金に比べて高い。早めに仮申し込みをしておかないと、入学料の期限に間に合わない恐れもある。
県内各地の高校で、教育費について講話する機会も多い慶田城さん。「高校3年生の5~6月ごろに保護者を対象に話す際に、7割ぐらいは、進学後のお金の話をしていないように感じる」との感触だ。「親子で早めにコミュニケーションを取る必要がある」と指摘する。
子どもの学年・年齢のタイミングや保護者自身の性格・価値観によっても、おすすめの手法は違ってくる。例えば、子どもが生まれたばかりなら、児童手当を活用するなどして、現金を月1万円貯めるだけでも、高校を卒業する18年後には、216万円を貯めることができる。
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まずは、それぞれの手法の特徴について知り、自身の考え方に合う備え方や組み合わせなどを検討していくことが大切だという。例えば、日本ファイナンシャル・プランナーズ(FP)協会沖縄支部は年に数回、無料のセミナーやフォーラムも開催し、広く暮らしに必要なお金の計画について参考になる情報を発信している。
また、暮らしに役立つお金の知識を中立・公正な立場から提供する「沖縄県金融広報委員会」は、地域の自治会や学校、PTAなどへ、ファイナンシャルプランナーや税理士、社会保険労務士らを金融広報アドバイザーとして無料で派遣する事業を実施している。
慶田城さんは「県金融広報委員会とFP協会で協力し、離島でも暮らしに関わるお金のセミナーを無料で開いているが、参加者はまだ少ない、もっと地元の人に参加してほしい」と話し、無料での講座なども通して教育費について知識を深めるきっかけにしてほしいと呼びかけた。(古堅一樹)
(隔週金曜掲載)
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