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【記者ノート・動画あり】あの「承認」も仕事納めの日 再質問できなかった後悔 10年前の「辺野古埋め立て承認」会見 古堅一樹(デジタル報道グループ)


【記者ノート・動画あり】あの「承認」も仕事納めの日 再質問できなかった後悔 10年前の「辺野古埋め立て承認」会見 古堅一樹(デジタル報道グループ) 米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古埋め立て申請の承認を正式に表明する仲井真弘多知事=2013年12月27日、知事公舎
この記事を書いた人 Avatar photo 古堅一樹

 思えば、あの「承認」も年末の仕事納めの日だった。10年前の2013年12月27日、金曜日。米軍普天間飛行場の移設に向けて政府が提出した辺野古埋め立て申請を当時の仲井真弘多知事の下、沖縄県が正式に承認し、知事公舎で記者会見が開かれた。当時、政治部に所属していた私は、先輩や同僚と一緒に取材した。冒頭で仲井真知事は、発表文が書かれた紙に顔を近づけて目を凝らし、埋め立てを承認した経緯を約15分かけてゆっくりと読み上げた。発表文の読み上げよりも、質疑応答の方に時間を確保し、説明責任を果たしてほしい。そう思いながら読み終わるのを待った。

「公約違反」を否定

 質疑応答では、知事選で掲げた普天間飛行場の県外移設を求める公約に違反するのではないかを問う質問が相次いだ。知事は「公約を変えたつもりはない」と独特の論理で一貫性を主張した。各社から、表現や視点は変えつつも、同様の趣旨が根底にある質問が出た。しかし、知事は「公約違反」を否定し続け、あくまで、手続きとして公有水面埋立法の基準で審査した結果だとした。

「適合が不適合か微妙なところ」

 私も質問の手を挙げ続け、開始から約30分後、ようやく指名された。聞いたのは、同法に基づく県の審査で最後まで検討していた環境保全に関する項目を「適合」と判断した理由だ。

 政府が示した辺野古埋め立て申請は、県外から大量の土砂を搬入するという前例のない計画が含まれていた。県外からの土砂に外来種が混入し、貴重な生物多様性がある大浦湾の生態系に深刻な影響を与える懸念が大きく、不承認の根拠になるとの見方も出ていた。県が審査の一環で聞いた名護市長の意見でも、その点を含めて不承認とするように求めていた。

 埋め立てを承認する1週間前の12月20日の時点でも、審査を担当する土木建築部の當銘健一郎部長は取材に対し「適合か不適合か微妙なところもある」と話すなど環境保全の項目については最後まで判断を保留した。担当課の事務方もかなり議論を重ねていたという。

 こうした点を踏まえた私の質問に回答したのは、知事ではなく審査を所管する當銘部長。沖縄防衛局が一定の環境保全策を示していることや、留意事項として有識者で構成する環境監視委員会に助言を受けて工事を進めることなどを挙げた。

わずか1週間で何が

 知事は、法の基準に沿っただけだと強調するが、「適合か不適合か微妙」という段階から、わずか1週間で環境保全策が十分であると判断する段階に至ることができるのか。再質問しようと思った次の瞬間、県側の司会者が「はい、これを持ちまして・・・」と会見を打ち切ろうとした。これほどの重大な局面で、県側から一方的に会見を終了するのはあり得ない。記者団として一斉に「いやいや!」と続行を求める声を上げ、一悶着(ひともんちゃく)の後、県の又吉進知事公室長が「あと3問」と言い、続けることになった。

 改めて「県外移設」公約との関係性を踏まえた質問が続いた。知事は同様の説明を繰り返した。約14分後、又吉公室長は「技術的な点があれば、土建部長、農林水産部長、環境部長がいる。知事の会見は終わらせていただく。ありがとうございました」と打ち切った。会見後、質問の順番が来た時に、もっと瞬時に切り返して再質問すべきだったと後悔した。

またも年末の「承認」

 あの会見から10年。ことしの仕事納めの2023年12月28日、辺野古埋め立てをめぐる新たな「承認」が行われた。大浦湾側の軟弱地盤の改良工事を追加する設計変更だ。ただし、今回は、県が承認できないと判断をする中、国が強制的に代執行した異例の事態だ。ただし、今回の設計変更も、前提となっているのは、10年前の辺野古埋め立て「承認」だ。今は、政治部から離れた部署に所属しているが、年末に繰り返されるドタバタを見ていると、既視感もある。この悪循環をどう断ちきれるのか。今、所属しているデジタル報道の立場からも発信を続けたい。

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