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沖縄で「ととのう」を根付かせたい 有名編集者や実業家も…「沖縄アウトドアサウナ協会」の野望<熱島!沖縄サウナ>5


この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子
沖縄県内の森と川でアウトドアサウナ(沖縄アウトドアサウナ協会提供)

 沖縄ではなじみが薄い「アウトドアサウナ」がリゾートホテルを中心に広がりつつある動きを連載第3回で紹介した。その火付け役とも言えるのが「沖縄アウトドアサウナ協会」だ。実業家で編集者の箕輪厚介さんのほか、ホテルの支配人や県内外で事業展開する経営者などが理事に名を連ねている。全国で活躍する彼らがなぜ沖縄で、なぜアウトドアサウナを広めようとしているのか。その狙いには沖縄が持ついくつもの可能性が秘められていた。

(田吹遥子)

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■沖縄のサウナは「エンタメ」になる

 沖縄アウトドアサウナ協会。2021年6月に結成したこの組織は、多種多様なメンバーが所属する。理事長はアーティストのオフィシャル・カメラマンを務めていることでも有名な沖縄在住の写真家・武安弘毅さん。理事は編集者の箕輪さん、ホテルパームロイヤルNAHA国際通り代表取締役総支配人の高倉 直久さん、ITから福祉、不動産まで多角的な事業を展開する秋山基さん、アパレルブランドのプロデュースなどを手掛ける外所一石さん、東京と沖縄を拠点に地域創生の企画事業を展開する大津 秀一さん、そして広報として沖縄で化粧品の開発、販売他、自身もインフルエンサーとして活躍する潮ゆいなさんの6人だ。

 大津さん曰く「プライベートでつながりがある」というこのメンバーは、東京や北海道など各地域で共にサウナを楽しんだり関連事業に携わったりしてきた。その中で沖縄を拠点とするメンバーがいたこともきっかけとなり、沖縄に関心を寄せたという。

「東京や北海道のサウナは温度が高く、水風呂は氷水や雪の中と『本気のサウナ』があるんですが、一方で沖縄には雰囲気がいい海やプールがある。東京や北海道で求められているものとは違う、初心者でも入りやすい『エンターテインメント』として入れるサウナができると思ったんです」(大津さん)。

■「ご当地性」を求めてアウトドア

クバの葉で作った民具のうちわ(沖縄アウトドアサウナ協会提供)

 武安さんは「サウナで盛り上がってるけど、それはあくまでも施設の特徴。わざわざそこの土地に行く必要があるのかと思うことが多い」と指摘し「(沖縄にあるもの)×サウナで沖縄のご当地性を出したい」と語る。

 協会は、昨年久米島で住民限定に海洋深層水を水風呂に用いたアウトドアサウナをトライアルで実施した。サウナの水風呂と言えば、どれだけ冷たいかという水温のみに注目が集まりがちだ。しかし武安さんは「海洋深層水は年中11度で取水できる上に、ミネラル分が多く化粧水みたいなものはサウナ業界で初。これは強力」とその価値に太鼓判を押す。

久米島の島民限定で実施したアウトドアサウナ=2021年(沖縄アウトドアサウナ協会提供)

 通常沖縄の海では水温が高く、水風呂にするには少しぬるい気もする。そう話すと2人は「沖縄はわき水や地下水が多い」「わき水の水量は全国で4位(2022年環境省状況調査)なんです」と答えた。

 実は水が豊富な沖縄。海だけでなく川やわき水も活用できる。そして元々暑い気候のため、あおぐための民具もあり、ロウリュ時の「熱波」に使える。

 「最初、沖縄は(気温の高さなどから)圧倒的にぬるくて逆境だと思っていたが、いざやってみるといいことが多い。探せば探すほど宝の山だ」。武安さんは沖縄のポテンシャルを改めて強調した。

■当たり前になるよう、ルール作りから

 現在協会は、冬に休眠するプールを活用したい県内のリゾートホテルの要望に応え、アウトドアサウナに欠かせないテントサウナの貸し出しや運営のサポートを行っている。連載第3回で紹介したオクマ プライベートビーチ&リゾートでのイベントもその一環。さらにハワイの老舗高級ホテル「ハレクラニ沖縄」でのテントサウナサービスもサポートした。

 さらに協会では「沖縄の人にも気軽に楽しんでほしい」として、キャンプグッズ専門店やホステルなどで、テントサウナを安価で貸し出しできる仕組みも検討しているという。近年、県民にも広がるキャンプブームとも相性が良さそうだ。

オクマ プライベートビーチ&リゾートでのサウナフェスの様子=2021年12月25日

 そのためにも「まずはルール作りが大事」と2人は話す。沖縄本島北部や西表島の森は世界自然遺産に登録された。そのエリア以外でも、自然や周囲の環境を配慮する必要がある。しかし、機動性が高いテントサウナは、ルールが定まらないうちに貸し出しが広まると、地域や自然環境を壊しかねない。「ルールを守って気軽に体験してもらう仕組みをつくりたい」と語る。自治体や地域との調整や連携を進めていく予定だ。

 これらの活動に向け、協会は3月末までクラウドファンディングで資金を募っている。しかし大津さんは「活動を外に広め、仲間を作ることが目的」と語り、資金集めより活動の周知に重きを置いているとする。

滝のある場所で実施したアウトドアサウナ=沖縄県北部(沖縄アウトドアサウナ協会提供)

なぜここまで注力して沖縄でサウナを広めるのか――。

 大津さんは「どんな人もサウナが好き。サウナで横串を差してつながることができる」とサウナを通じた人同士のつながりにも価値を見出す。

 武安さんは「沖縄の地域の人にとってサウナに入ることが当たり前になってほしい」と話す。
また「今は冬の沖縄は安いから行く、という人が多いがそうじゃなくて(サウナがあるから行くという)新しい観光コンテンツにもなってほしい」と観光面での可能性にも改めて言及。「『流行』ではなく『根付く』ことが大事。沖縄でサウナを根付かせたい。沖縄でサウナがもっと広がり、そこから新たな施設ができたらうれしい」と期待も込めた。

 

連載「熱島!沖縄サウナ」

~南の島でととのう~

 9割が「シャワー派」とされる沖縄でもサウナブームの熱がじんわりと広がっている。特にコロナ禍に見舞われた県内のホテルが、新たな冬の観光コンテンツとして、潜在的な県民サウナ―の掘り起こしとして、サウナに活路を見出している。沖縄のあらゆるサウナや風呂を巡る新たな動きとその可能性に迫った。

①リゾートホテルサウナでととのう「ワンランク上」を日帰り、回数券で地元客に

②カプセルホテルのサウナでととのう 那覇の中心、6時間入り放題「サ活」プランも

③アウトドアサウナでととのう 冬のプールは全て水風呂!沖縄観光の目玉になるか

④沖縄唯一のロウリュと熱波でととのう 観光客と地元客、両にらみの戦略

>>連載「熱島!沖縄サウナ」をまとめて読む


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