夏日から一転、沖縄の冬特有の強い風が吹き込む曇天となった昨年のクリスマス。あるホテルのグランドゴルフ場とプールサイドには、細い煙突付きのテントが計7張り並んでいた。中から出てきたのは、水着やTシャツ姿の人たち。肩に掛けたバスタオルで汗をぬぐいながら、火照った体を外気で冷やす。テントサウナを活用し、川などに入って涼む「アウトドアサウナ」のイベントが沖縄にもやってきた。県外とは違うのは、冬も暖かく外気浴にうってつけの気候。そしてリゾートプールが水風呂になること。沖縄の新たな冬の観光コンテンツとして注目されている。(田吹遥子、野添侑麻)
■汗かき、涼んで、食べて…まさに「フェス」
イベント「アウトドアサウナフェス」が開かれたのは国頭村奥間にあるオクマ プライベートビーチ&リゾート。セールスマーケティング部の北條美佐子さんによると、企画は2~3年前から計画されていた。しかしコロナ禍で2度延期に。今回満を持して開催に至った。
オクマのような専用ビーチや屋外プールを所有する大型のリゾートホテルでは、専用施設を活用した宿泊以外のサービスも重要な収入源となる。夏はビーチやプールを楽しむアクティビティが盛んだが、冬は海やプールに入るには寒く、利活用が課題となっていた。そこで目を付けたのが「アウトドアサウナ」だ。
「サウナは季節的には冬がいいということですし、ここはプールも海もあって敷地も広く休むには最適です。目新しいイベントで新たなコンテンツになると企画しました」。
北條さんによると、今回こだわったのは「プロと組むこと」だという。
そこで、沖縄でアウトドアサウナを推進する「沖縄アウトドアサウナ協会」や県外でアウトドアサウナイベントの企画にも関わっている雑誌「サウナランド」と共催。サウナに使用したテントも共催の2団体やそのスポンサーなどを通じて、耐熱性の高いロシア製のものなどを取り入れた。「サウナ通の人たちにも満足してもらえれば」。
テントの中はどうなっているのか。
4~5人が入れる広さで、中央に薪をくべたストーブが一つ。入った時点で既に暖かいが、その上に積まれた熱々のサウナストーンに水やアロマをかけて蒸気を出す「ロウリュウ」をすると一気に高温に。
記者は着衣のまま入ったこともあり2~3分でどばっと汗が出た。だが、テントの外に出ると、冷たい風がさっと汗を乾かしてくれる。体温がちょうどよい状態になり「ととのい」に近い感覚を得られる。
通常のサウナとの違いは、水着やTシャツなど服を着た状態であること。それゆえ、そのまま食事をしたり、またサウナに入ったり外で涼んだりということができる。敷地内のミニステージで音楽を流していたり、蒸気をうちわであおる「熱波」が受けられる時間があったりと、さまざまな企画を好きに楽しめるのはまさに「フェス」そのものだ。
イベントには、編集者で沖縄アウトドアサウナ協会の理事でもある箕輪厚介さんも企画やサポートなど幅広く携わった。サウナ雑誌の編集なども務め、自身も根っからのサウナ愛好家(サウナー)という箕輪さんは「沖縄のホテルのプールは全て水風呂にできる」と期待を込める。
■降っても寒くても!持続可能な観光に
ホテルのプールを水風呂にー。そんなサウナーの夢を叶えるアウトドアサウナを常設のサービスとして取り入れているホテルも出てきた。
北谷町美浜にあるホテル「ベッセルホテルカンパーナ沖縄」では、今年12月1日より、屋上プールエリアにテントサウナを設けた貸し切りサービスを提供するプランを始めた。冬季期間に遊休化していたプールエリアの有効活用の手段として企画された。
元支配人で現在ベッセルホテル開発営業課の淵上敬司さんによると「オフシーズンとなる冬場の新しい目玉として、テントサウナを導入することに決めた。1日3枠の90分交代制で、その間はプールエリアを貸し切ってのびのびと本格サウナを楽しむことができるのが一番の売りだ」と話す。
こちらのテントサウナも侮ることなかれ。テント内の室温は80~90度と本格的な熱さで保たれている。テントは屋上部分がシースルーとなっており、温かく柔らかな沖縄の冬特有の日差しを浴びながらサウナを楽しむことができる。ストーブの上で熱されたサウナストーンに、アロマ水をかけて熱い蒸気を楽しむ「ロウリュウ」が行えるのも自慢のポイントの一つ。アツアツに熱されたあとは広々としたプールでクールダウン。オーシャンビューを眼下に、心地良い海風を浴びる外気浴を楽しむことができる。
ご自身もサウナーだという淵上さんのおすすめは「17時~18時半」の時間帯。ホテルの目の前で美しいサンセットを見ながらサウナに入ることができ、至福の時間を味わえるという。1組につき8人まで入ることができるので、家族など大人数でも本格サウナを貸し切りで楽しむことができる。
沖縄で広がりつつあるアウトドアサウナ。箕輪さんは「沖縄の冬の気候はサウナにちょうどいいし、雨でも曇りでも楽しめる」と話し、オフシーズンや悪天候時のコンテンツとなり得るとして「持続可能な観光の形になる」と太鼓判を押す。「沖縄にはアウトドアサウナができる海も川も滝もある。沖縄は名だたる「サウナ大国(サウナ県?)」になれるかもしれない」と大きな青写真を描いた。
連載「熱島!沖縄サウナ」
~南の島でととのう~
9割が「シャワー派」とされる沖縄でもサウナブームの熱がじんわりと広がっている。特にコロナ禍に見舞われた県内のホテルが、新たな冬の観光コンテンツとして、潜在的な県民サウナ―の掘り起こしとして、サウナに活路を見出している。沖縄のあらゆるサウナや風呂を巡る新たな動きとその可能性に迫った。
①リゾートホテルサウナでととのう「ワンランク上」を日帰り、回数券で地元客に
②カプセルホテルのサウナでととのう 那覇の中心、6時間入り放題「サ活」プランも
④沖縄唯一のロウリュと熱波でととのう 観光客と地元客、両にらみの戦略
⑤沖縄で「ととのう」を根付かせたい 有名編集者や実業家も…「沖縄アウトドアサウナ協会」の野望
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