15秒をどう使うか
この日、いしみね店長が撮影したのは肩や首、足などに当てて凝りをほぐす小型マッサージ器のCM。カメラは1台。撮影の準備では、いしみね店長はスタッフと一緒にテーブルや小道具などを移動させ、手際よく動く。撮影に入ると、カメラマンやいしみね店長らは、断続的に再生画面を確認していた。15秒、30秒の限られた枠内で効果的に商品の魅力を伝えるため、取捨選択して視聴者に届く言葉を探る。
肩をたたき「あ~、疲れた~!」と表情も含めて疲労感を表現する場面も撮影。さらに、小型マッサージ器を肩や首、足などに当てると、気持ちよさそうな表情に一変した。
「○○(というせりふ)はいらないんじゃないか」「この時は(マッサージ器を)あまり動かさないようにしよう」など、カメラマンや大城常務らと一緒に、いしみね店長は、言い回しをどんどん変化させた。
いしみね店長は「見ている方は年配の人が多いので、分かりやすい言葉で伝えている。はやりの言葉などを使わないように」と心がける。「実際、専門用語なども出てくる」と言うが、幅広い世代に伝わる言い方を模索する。例えば「ガーデニング」は「畑仕事」、「クローゼット」は「押し入れ」にそれぞれ言い換える
商品の魅力を伝える表現を追求する中で「最近はね、尺が15秒のCMなので商品の説明で全部(時間を)使ってしまって『すごいでしょ~!』と言うすき間がなくなっている」と笑う。
「うちの強みは何か」
打ち合わせで即興的に耳に残る言い回し、リズムを何度も試して模索し、視聴者へ届くせりふや動作を磨いていく。「リズムが良くないだけで、全然耳に入ってこないこともある。いつも、当初の絵コンテ案は「半分くらい変わる」(大城常務)という。
絵コンテの調整から撮影終了まで、約1時間が目安。2、3本まとめて撮影することが多い。CM素材のストックが少なかった時期には1日5、6本まとめ撮りしたこともある。いしみね店長は「あのテンションで撮影するから、最後には本当にクタクタになった。1日3本くらいがいいよ」と笑う。
商品によっては、タレントの大城優紀さんもCMに起用している。この日、歯ブラシの後に、歯間の汚れなどを水流で洗う「マウスウォッシャー」を紹介するCMで、大城さんの撮影も行われた。
県外大手も進出してくる中で、「安さだけでは競合と闘ってもかなわない」と話す大城常務。「うちの強みは何なのか。面白い商品をどれだけ作れるか」を考え、CMを通していかに効果的に伝えるかを模索し続けている。
実は、最初はいっぱい失敗・・・
今では、沖縄県民にとって、おなじみになったビッグワンのCM。売り上げに効果的に連動している。ただし、CM展開は、最初から順調だったわけではないという。
次回は、「最初はいっぱい失敗した・・・」と明かすビッグワンがCM展開を本格化させた当初の試行錯誤や、いしみね店長って本当に店長なのか、出演するきっかけは何だったのかなどに迫る。>>連載2回目 CM初期の難局 <ビッグワン「おもしろさ」の秘密>
(古堅一樹、熊谷樹)