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【まとめ】辺野古新基地の設計変更めぐる経緯を振り返る 沖縄県と国、法廷闘争繰り広げる


【まとめ】辺野古新基地の設計変更めぐる経緯を振り返る 沖縄県と国、法廷闘争繰り広げる 米軍キャンプ・シュワブ辺野古崎の上空写真
この記事を書いた人 Avatar photo 熊谷 樹

 沖縄県にある米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設工事。軟弱地盤改良工事に伴う設計変更を巡る国と県の攻防を振り返る。

■2020年4月21日 防衛省が設計変更を県に申請

 2020年4月21日、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、政府は軟弱地盤の改良工事に伴う設計変更を沖縄県に申請した。地盤を固めるため、砂ぐいを7万1千本打ち込む工事を追加し、埋め立てを進めるため護岸配置などの工程も変更するとした。県が承認した時点から埋め立て工事を経て米軍の使用開始までに12年かかると見込み、総経費として9300億円を見積もった。

政府、辺野古新基地設計変更を申請 軟弱地盤改良工事を追加 沖縄県は承認しない見通し

国が県に提出した普天間飛行場代替施設建設事業の「公有水面埋立変更承認申請書」=2020年4月21日午前9時半ごろ、名護市の北部土木事務所

■2021年11月25日 県が設計変更を「不承認」と判断

 2020年11月25日、名護市辺野古の新基地建設を巡り、沖縄県は沖縄防衛局から提出された軟弱地盤改良工事などの設計変更申請について、軟弱地盤の調査の不備や環境保全への措置が不適切だとして「不承認」と判断し、同局に通知した。これにより、沖縄防衛局は軟弱地盤がある大浦湾側の工事ができない状況となった。

辺野古新基地の設計変更、沖縄県が不承認 軟弱地盤の調査不備を指摘

玉城知事の不承認表明を受けて「新基地建設をやめろ」と改めて訴える市民ら=2021年11月25日、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブのゲート前

■2021年12月7日 防衛局が国土交通相に審査請求

 2021年12月7日、沖縄防衛局は沖縄県に提出した設計変更申請が「不承認」とされたことへの対抗措置として、行政不服審査法に基づく審査請求を斉藤鉄夫国土交通相に提出し、不承認の取り消しを求めた。これに対し、玉城デニー知事は県として不承認処分の正当性を主張していく姿勢を示した。

防衛局が沖縄県の不承認取り消し求めて審査請求 辺野古新基地設計変更

■2022年4月8日 国交相が県の不承認を取り消す判決

 斉藤鉄夫国土交通相は2022年4月8日、沖縄防衛局が提出した埋め立て工事の設計変更を不承認とした県の行政処分を取り消す裁決をした。辺野古移設を進める防衛省の主張を支持し、防衛局の設計変更を20日までに承認するよう求める地方自治法に基づく勧告も併せて出した。これに対し玉城デニー知事は、国地方係争処理委員会での審査申し立てや抗告訴訟など対抗策の検討に入った。

辺野古設計変更への県不承認、国が取り消し 知事は対抗策検討へ

名護市辺野古の新基地建設の現場

■2022年4月28日 国交相、県に承認を求める是正の指示

 2022年4月28日、斉藤鉄夫国土交通相は名護市辺野古新基地建設工事を巡り、沖縄防衛局が申請している設計変更を5月16日までに承認するよう、県に是正を指示した。28日は沖縄が日本の施政権から切り離された1952年のサンフランシスコ講和条約から70年の節目に当たり「屈辱の日」。承認の期限も沖縄の日本復帰50年を迎える5月15日の翌日となった。県内では「県民に対する気遣いが全くない」(県幹部)などと、批判が噴出した。

辺野古新基地で国が沖縄県に是正指示 「屈辱の日」に 県内から批判噴出

■2022年5月30日 県が是正指示を不服として係争委に審査を申し出

 2022年5月30日、沖縄県は沖縄防衛局の設計変更申請を承認するよう求めた斉藤鉄夫国交相の是正指示を不服とし、国地方係争処理委員会に審査を申し出た。県は係争委への申し出で、国交相の権限乱用や県の不承認の正当性などを主張した。

沖縄県が係争委に審査申し出 国交相の是正指示に不服 辺野古設計変更

■2022年7月12日 係争委、県の申し出を却下

 2022年7月12日、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」は、沖縄県の審査申し出を却下した。県は、沖縄防衛局による設計変更申請を不承認とした処分を斉藤鉄夫国土交通相が取り消した裁決について「無効で、違法な国の関与に該当する」と訴えていたが、係争委は審査対象となる「国の関与」に該当しないと判断した。

係争委、県申し出却下 辺野古・国交相裁決 「国関与当たらず」

■2022年8月12日 県が裁決取り消し求め提訴

 2022年8月12日、沖縄県は辺野古新基地建設の設計変更申請を不承認とした県の処分が取り消されたことを不服とし、斉藤鉄夫国土交通相による裁決の取り消しを求める訴訟を福岡高裁那覇支部に提起した。総務省の第三者機関である国地方係争処理委員会(係争委)が県の不服審査申し出を却下したことを受け、設計変更申請不承認を取り消した国交相裁決の適法性について司法の判断を仰ぐこととなった。

沖縄県、国交相の裁決取り消し求め訴訟提起 辺野古設計変更不承認巡り

記者会見する玉城デニー知事=2022年8月12日、那覇市の県庁

■2023年3月16日 辺野古設計変更の不承認めぐる2訴訟、県が敗訴

 2020年3月16日、名護市辺野古の新基地建設で、軟弱地盤改良工事に伴う防衛省の設計変更申請を沖縄県が不承認とした処分を巡り、県が国の関与取り消しを求めた2件の訴訟の判決が下された。福岡高裁那覇支部(谷口豊裁判長)は、県の訴えをいずれも退けた。国土交通相が県の不承認を取り消す裁決をし、さらに承認するよう求める是正の指示を出したことに対し、県は、裁決も是正指示もどちらも違法だとして、取り消しを求めていた。

辺野古設計変更の不承認巡る訴訟、沖縄県の訴え退ける 高裁那覇支部判決

名護市辺野古の新基地建設を巡る県と国の訴訟の判決が言い渡された福岡高裁那覇支部=2023年3月16日午後、那覇市樋川(代表撮影)

■2023年4月10日 辺野古設計変更の不承認巡る訴訟、県が上告申し立て

 名護市辺野古の新基地建設で、軟弱地盤改良工事に伴う防衛省の設計変更申請を県が不承認とした処分を巡り、県が国の関与取り消しを求めた2件の訴訟について、2023年4月10日、県は訴えを退けた福岡高裁那覇支部の判決を不服として最高裁に上告受理申立理由書を提出した。

辺野古設計変更の不承認を巡る2訴訟、最高裁へ 県が上告申し立て

■2023年9月4日 辺野古設計変更めぐる「是正指示」取り消し訴訟で県が敗訴

 沖縄県名護市辺野古の新基地建設で、軟弱地盤改良工事に伴う沖縄防衛局の設計変更申請を県が不承認とした処分を巡り、国土交通相が県へ承認するよう「是正の指示」を出したことの違法性が争われた訴訟の判決で、最高裁第1小法廷(岡正晶裁判長)は9月4日午後、県の上告を棄却した。変更申請の不承認に関する訴訟2件で、県の敗訴が確定した。

最高裁、沖縄県の上告棄却 辺野古新基地の設計変更をめぐる「是正指示」裁判

県の訴えを退けた最高裁判決を受け、開かれた抗議集会=2023年9月4日、最高裁判所の西門付近

■2023年9月19日 国交省が玉城デニー知事に設計変更の承認を勧告

 9月19日、斉藤鉄夫国土交通相は沖縄防衛局による軟弱地盤改良工事の設計変更申請を承認するよう玉城デニー知事に勧告する行政文書を県に発送した。県に代わって斉藤国交相が強制的に手続きを行う「代執行」を前提とした勧告で、玉城知事が承認に応じない場合、さらなる「指示」を経て県の代わりに承認処分をする代執行訴訟を10月上旬にも高裁に提起する見込みだ。

沖縄県知事への承認勧告、期限は約1週間後 国交相の「代執行」前提に 辺野古設計変更

閣議会見で辺野古新基地建設工事の政府方針についてコメントする斉藤鉄夫国土交通相=9月19日、国交省

■2023年9月27日 玉城知事「期限までに承認は困難」と表明

 沖縄県の米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、斉藤鉄夫国土交通相が大浦湾側の軟弱地盤改良工事の設計変更申請を承認するよう玉城デニー知事に求めた勧告に対し、玉城知事は勧告の期限となる9月27日、判断を先送りする考えを示した。

玉城知事「期限までに承認は困難」と表明 辺野古設計変更 判断先送り

■2023年9月28日 国交省、設計変更の承認を指示 

 斉藤鉄夫国土交通相が9月28日、沖縄防衛局による軟弱地盤改良工事の設計変更申請を承認するよう玉城デニー知事に「指示」する行政文書を県に発送した。関係者によると指示の期限は10月4日までで、勧告より猶予は短縮される。玉城知事が指示に従わなかった場合、斉藤国交相は県に代わって強制的に手続きを行う「代執行」に向けた訴訟を福岡高裁那覇支部に提起する見込みだ。

設計変更の承認指示、期限は10月4日 国「代執行を前提」