<墓碑銘2020その1>亡くなった人々、忘れ得ぬ足跡(文化・平和運動)大城立裕さん、安里要江さん…


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 戦後75年、沖縄の施政権返還から48年となった2020年。沖縄戦の記憶を後世に継ぎ、沖縄の文化や芸能の振興・発展に心血を注ぎ、競技力向上に貢献した人たちが惜しまれながらこの世を去った。(年齢は享年、死亡年月、役職は死去当時、敬称略)

【写真特集】2020年亡くなった方々

大城立裕さん=2012年

【社会・平和・福祉】 
 沖縄戦中、座間味村で起きた「集団自決」(強制集団死)を生き延びた宮城恒彦(86歳、8月21日)は、姉を失ったことを悔やんで自分を責めた母親の他界後に初証言した。県内最高齢の沖縄戦語り部の安里要江(99歳、11月12日)は映画「GAMA 月桃の花」のモデルになった。1981年から語り部活動を始め、40年近く戦争の悲惨さを訴えた元ひめゆり学徒の津波古ヒサ(93歳、12月8日)は、ひめゆり平和祈念資料館の建設に携わると、89年の開館当初から2019年まで、約30年にわたり証言員を務めた。

 フリージャーナリストの由井晶子(86歳、4月15日)は共生社会の実現や女性の権利獲得のための活動に情熱を注いだ。

 沖縄弁護士会元会長の大城浩(68歳、5月23日)は15年に辺野古の埋め立て承認を検証する有識者による「第三者委員会」の委員長、18年に県の法律顧問を務めた。

 闘牛写真家の久高幸枝(45歳、5月29日)は闘牛女子の先駆けとして13年と17年に写真集を発刊。闘牛ブームをけん引した。

 県内最高齢の田港小夜(113歳、8月7日)は戦争で夫を亡くした後は小さな商店を経営し、4男3女を育て上げた。

 重い心臓病「拡張型心筋症」を患った森川陽茉莉(5歳8カ月、9月30日)は県内外から支援を得て心臓移植を受けた。

 琉球政府時代から社会福祉協議会の中核的役割を担った親川富蔵(95歳、10月27日)は市町村社協の設立・育成に貢献した。

 学び考え行動するうるま市民ネットの元共同代表、崎原盛秀(86歳、11月4日)は「金武湾を守る会」代表世話人として石油備蓄基地反対運動(反CTS闘争)をけん引した。

【文化・芸能】
 沖縄初の芥川賞作家で、沖縄文学をけん引した大城立裕(95歳、10月27日)は小説、戯曲、評論、エッセーまでさまざまな分野で琉球・沖縄の通史を独自の歴史観で書き続けた。日本復帰前の1967年、米兵による暴行事件を通して、米琉親善の欺瞞(ぎまん)を暴いた「カクテル・パーティー」で芥川賞を受賞。沖縄の戦後史を体現した。

 米ハワイ州生まれの県系2世で小説家・劇作家のジョン・シロタ(92歳、7月28日)は沖縄を題材に移民や戦争、基地問題を巡る人間模様やアイデンティティーの葛藤を描き、小説「ラッキィ・カム・ハワイ」や戯曲を多く残した。

 シナリオライターの上原正三(82歳、1月2日)は金城哲夫に誘われて円谷プロ入り。69年にフリーとなり「帰ってきたウルトラマン」などの脚本を執筆した。

 県指定無形文化財「琉球漆器」の保持者で、漆芸家の前田孝允(83歳、1月14日)は92年の首里城復元に漆塗りで携わった。昨年焼失した、首里城の再建に関わることにも強い意欲を示していた。

 詩集「赤土の恋」で第7回山之口貘賞を受賞した詩人の与那覇幹夫(80歳、1月20日)=本名・幹男=は、同賞の選考委員を務め文学振興に尽力した。「南涛文学会」の会長などを務めた作家の長堂英吉(87歳、2月18日)=本名・謝花長英=は小説「ランタナの花の咲く頃に」で新潮新人賞を受けた。詩人で画家の久貝清次(83歳、4月27日)は詩画集「おかあさん」で第28回山之口貘賞を受けた。琉球放送報道局次長を務めた山川文太(79歳、8月23日)=本名・徳田安則=は2001年に第1詩集「げれんサチコーから遠く」で第24回山之口貘賞を受けた。

 美術家で琉球大学名誉教授の安次富長昭(90歳、8月10日)は戦後沖縄美術界をけん引した。

 県指定無形文化財「琉球歌劇」保持者で沖縄芝居役者の北村三郎(82歳、2月6日)=本名・高宮城實政=は沖縄芝居の若手育成やうちなーぐちの普及に努めた。県指定無形文化財「琉球歌劇」保持者の与座ともつね(83歳、7月1日)=本名・与座朝庸=は「与座兄弟」として人気を集めた。

 国指定重要無形文化財「組踊」保持者で、琉球古典音楽野村流伝統音楽協会元会長の大城長俊(81歳、4月7日)は琉球古典音楽の歌三線奏者として活躍した。県指定無形文化財「沖縄伝統音楽野村流」保持者の比嘉恒夫(76歳、1月21日)は、野村流音楽協会副会長や琉球古典音楽湛水流保存会会長を歴任した。

 元沖縄藝能史研究会会長の當間一郎(81歳、6月18日)は組踊写本の発掘・整理や組踊の復活上演に尽くした。

 琉球舞踊などの振り付け講師として活動した宮城清(76歳、5月28日)は沖縄らしい型を取り入れた群舞を普及する「おきなわ結舞踊推進協議会」の発足に関わり、会長に就いた。

 琉球料理研究家で元那覇市議の渡口初美(85歳、11月26日)は琉球料理研究所を経営する傍ら、18年の県知事選に出馬した。

 女優の金城茉奈(24歳、12月1日)はテレビ朝日系「騎士竜戦隊リュウソウジャー」で龍井うい役を演じた。

【スポーツ】
 元県卓球協会会長の城間利雄(97歳、7月13日)は県卓球競技の普及、発展に貢献した。